検索
主なテーマ一覧

【オリエンタルランド秘史#5】強面ファンドと面談「京成電鉄」旧本社の60年前

シリーズ#1はこちら

京成電鉄「強気な姿勢」の危うさ

#4から続くオリエンタルランド筆頭株主の京成電鉄に対し、同株を一部売却して議決権所有比率を15%まで引き下げることを提案していたアクティビスト(物言う株主)の英投資ファンド、パリサー・キャピタル。11月1日に創業者のジェームズ・スミスが京成電鉄の小林敏也社長と会合する予定だとパリサー側は発表していたが、当初、音無しであった。

しかし、ここにきて、両者の面談が実現していたことが判明した。11月14日、スミスが「日経ビジネス電子版」のインタビューに応じ、京成電鉄の小林敏也社長と面談し「建設的な対話ができた」と明らかにしたのだ。

そもそも、面談前日の10月31日、京成電鉄は上半期決算会見で、現在保有する22.15%のオリエンタルランド株を今後も持ち続けると表明。パリサーの提案を一蹴した。それでも対話に至ったのには、パリサーが簡単に引っ込むほど、やわな相手ではないことを京成電鉄側も悟ったからだろう。

スミスが2021年にパリサーを立ち上げる前に、香港責任者として在籍していたアクティビストの米エリオット・マネジメントはツイッター社(現Xホールディングス)をはじめ、さまざまな有名企業に介入し、提案を呑ませてきた。京成電鉄経営陣がこのままやり過ごそうとしても、大きなしっぺ返しを食らうのは必定。そもそも、パリサー側の提案のほうが正当性が強いのは客観的にも明らかなのだ。

それは会計上の問題である。京成電鉄にとってオリエンタルランドは議決権所有比率20%以上50%以下の持ち分法適用会社。その株式は貸借対照表で時価評価されない。パリサーが提案するように所有比率を15%まで引き下げれば、オリエンタルランド株は時価で資産に計上されることになる。売却益なども合わせると、京成電鉄の資産は3倍以上になり、株価上昇にもつながるというわけだ。

その背景には、オリエンタルランドの運営する東京ディズニーリゾートの好調さがある。10月には変動価格制の1日券の最も高い値段を1500円も上げ1万900円に設定したが、客足にはまったく影響していない。並ばずに優先的に入園できる「ディズニー・プレミアアクセス」の売れ行きも上々。2024年3月期の営業利益もコロナ禍前の2019年3月期の1292億円を大きく上回り、過去最高を達成するのは確実な情勢だ。

10年前、年が明けた2014年のオリエンタルランド株の始値(1月6日)は756円だった。その後は右肩上がり。最高値は今年6月29日に記録した5756円。現在も5000円前後で推移している。その結果、保有するオリエンタルランド株が京成電鉄の時価総額の2倍になるという捻じれ現象を招いてしまったのだ。ここまでオリエンタルランドの株価が上昇しなければ、売上高で鉄道17位に過ぎない京成電鉄がアクティビストのターゲットになることはなかっただろう。

シリーズ#1はこちら 京成電鉄「強気な姿勢」の危うさ …
1 2

ランキング記事

ピックアップ

  1. 【米国「フロードスター」列伝#3】偽ファンドマネージャー妻の片棒を担いだ不正共犯“主夫”の決断…

    父と同じ会計の道を歩み名門銀行、そして広告業界へ ウィリアム・リヴォルシーは、1959年、北東部の合衆国発祥の地、ペンシルベニア州フィラデル…

  2. 【ベーカー&マッケンジー・井上朗弁護士が徹底解説】トランプ政権は日本企業のガバナンスにどう襲…

    日本製鉄のUSスチール買収の行方 ──現在、日本製鉄によるUSスチール買収計画をめぐって米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)が安全保障の…

  3. 【2024年12月5日「適時開示ピックアップ」】オリンパス、千代田化工、ファーマライズ、Birdma…

    12月5日木曜日の東京株式市場は4日続伸した。日経平均株価は前日から119円値上がりし、3万9395円で引けた。前日の米国株の流れを引き継い…

  4. 蒲生氏郷「自分を有能だと誇示する者を登用するな」の巻【こんなとこにもガバナンス!#38】…

    栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「自分を有能だと誇示する者を登用するな」蒲生氏郷(がもう・うじさ…

  5. 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#4】伯ペトロブラス、ヨーロピアン・エナジー、米スペースX、泰ガ…

    伯ペトロブラス、デンマークの再生エネ企業と「eメタノール」生産へ ブラジル国営石油会社ペトロブラスは、合成燃料の一種である「eメタノール」の…

  6. 「見えないゴリラ」を見るためのリスクコントロール【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#6】…

    企業不祥事と「見えないゴリラ」 「見えないゴリラ」について、私自身、「企業不祥事」の文脈で業務上、過去に2回ほど触れたことがある。 ひとつは…

あなたにおすすめ

【PR】内部通報サービスDQヘルプライン
【PR】日本公認不正検査士協会 ACFE
【PR】DQ反社チェックサービス