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【オリエンタルランド秘史#15】三井不動産「OLCと縁切り」観測に“対立の因縁”

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物言う株主の提案を受け入れる可能性が増大

#14から続く「三井不動産はエリオット・マネジメントの提案を受け入れる可能性が高い」との見方が市場関係者の間で広がっている。

最強のアクティビスト(物言う株主)として知られる米ファンドのエリオットから株主提案を受けている三井不動産。1兆円規模の自社株買いはともかく、オリエンタルランド株の売却には応じるのではないかというのである。これまでの経緯を振り返ると、三井不動産がオリエンタルランド第2位の株主(信託口を除く)であり続けることに執着する理由が見当たらないからだ。

オリエンタルランドの株主構成は京成電鉄52%、三井不動産48%の時代が長く続いた。しかし、東京ディズニーランド(TDL)開園以降はもうひとつの主役である千葉県や、京成電鉄を再建する銀行団の中心となった日本興業銀行(現みずほ銀行)にも株式が譲渡され、その構成にも少しずつ変化が出てきた。

1996年12月11日、オリエンタルランドは東証1部に上場。当初の予定は東証2部だったが、その好調さから1部に変更された。東証1部への直接上場は民営化企業を除き、88年の三菱自動車工業以来、2社目だった。上場前の出資比率は京成電鉄グループ約41%、三井不動産約38%となっていた。上場に合わせ、三井不動産は550万株を売り出し、さらに“冷やし玉”として185万株を市場で売却。その結果、三井不動産の出資比率は38.2%から24.4%に減った。

1997年3月期、三井不動産はオリエンタルランド株売却益の732億円を特別利益に計上したものの、バブル崩壊の余波に喘ぎ、最終損益は440億円の赤字。19年前に連結決算の作成を始めてから初のマイナスに陥った。もし、オリエンタルランド株の売却がなければ、赤字は1000億円を超えていたことになる。以降、三井不動産にとってオリエンタルランド株は窮地に追い込まれたり、大型プロジェクトのために資金調達したい時に引き出すヘソクリのようなものになった。

三井不動産はオリエンタルランド上場以降もたびたび、このヘソクリを使った。2009年6月、三井不動産がオリエンタルランドに派遣していた役員が退任。持ち分法適用会社から外れたのを機に翌年2月、オリエンタルランドが行った株式公開買い付け(TOB)による自社株買いに応募。発行済み株数の5%近くを売却し、三井不動産の持株比率は11.76%まで下がった。なお、このTOBは中国事業の強化を図る三井不動産の意向を受けて実施されたという。

現在もオリエンタルランド発行済み株式の6.04%を持ち、京成電鉄(22.15%保有)に次ぐ実質株主2位の座を保つ三井不動産だが、その関係はますます希薄になっている。オリエンタルランドに対してだけでなく、その中心メンバーとして開発した浦安地区とも疎遠になりつつある。

TDL開園を2年後に控えた1981年、三井不動産は町から市になったばかりの浦安でツーバイフォー工法による3階建ての住宅を70戸、売り出した。即日完売だった。それから30年後に起きた東日本大震災によって、70戸中32戸が大規模半壊。残りの住宅もすべてに損壊が見られた。埋め立て地特有の液状化現象が起こっていたのだ。住民32人が三井不動産と子会社の三井不動産レジデンシャルを相手どり、損害賠償を求め東京地裁に提訴。住民側の怒りは凄まじく、最高裁まで争われたものの、三井不動産側は被害を予見できなかったとして、原告の訴えは退けられた。

#13#14でも触れたてきた通り、TDL計画を陰に陽に撤回させようとしてきた三井不動産。ここにきて、持ち株を伴う関係も振り解き、オリエンタルランドとの“縁切り”が現実味を帯びてきているのだ。今から45年前、三井不動産とオリエンタルランドは最後の対立を迎えていた。

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引き延ばしを図る三井不動産「覚書」の条件 坪…
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