【オリエンタルランド秘史#3】創業1年弱「専務逮捕」で入社した高橋政知
“夢の国”とはほど遠い苛酷な現実
(#2から続く)今年2023年6月28日、オリエンタルランドを被告とする注目の判決が東京高裁で出た。東京ディズニーランド(TDL)で着ぐるみをまとってショーに出演していた契約社員の女性が上司にパワハラを受けたと訴えていたもので、一審の千葉地裁は昨年3月、会社に安全配慮義務違反があったとして88万円の支払いを命じた。だが、高裁は一審判決を取り消し、女性の主張が事実とは認められない、もしくは違法とまではいえないとして、逆転敗訴となった。原告側は最高裁に上告した。
事件の発端は、来場客と記念撮影を行う最中に女性が男性客から右手の指を折り曲げられ、捻挫する暴行を受けたことだった。労災申請をしようとすると、上司は逆に女性の心の弱さを指摘。申請の協力を得られなかった。別の上司からは「我慢できねえのなら辞めちゃえよ」と言われたという。その後、女性は過呼吸などの症状に襲われるようになった。
一連の裁判の中で明らかになったのは苛酷な職場環境である。TDLや東京ディズニーシーの現場にいるスタッフのほとんどは時給で働く“準社員”と呼ばれるアルバイトだ。原告の女性は夢の国に憧れ働き始めたが、1年ごとにオーディションに合格しなければ、契約が更新されないシステムだった。地裁の判決ではショーに出演するスタッフ同士の関係を「配役をめぐる軋轢を生じやすい性質」と指摘している。でいながら、時給は1000円台前半に過ぎなかった。夢の国とはほど遠い現実がそこにはあった。
スタッフのディズニーランドへの想いに乗じて、労働環境の整備に力を入れてこなかったとすれば、コンプライアンス欠如の誹りを免れないのではないか。さらに言えば、スタートの段階からオリエンタルランドには企業倫理とは正反対のベクトルが働いていた。
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