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【損保ジャパン元役員「不祥事防止」の教訓学#1】企業不祥事と対峙の“我が30年”

わが国においては企業不祥事が絶え間なく繰り返されている。確かに、企業において不祥事が発生したことだけをもって、直ちにその会社のコンプライアンスやガバナンスに致命的な欠陥があるとまでは言えない。しかし、類似の形態を持った企業不祥事が“時”と“会社”と“人”を変えて繰り返されていることは、紛れもない事実である。そうした状況を見ると、やはり、不祥事企業各社のガバナンスに何らかの欠陥があったと言わざるを得ない。特集シリーズ4回目の今回は、損害保険ジャパンでリスク管理担当役員などを務め、長年、企業の危機管理に関わってきたジャパンリスクソリューション社長で、日本経営倫理学会常任理事の井上泉氏に、実効性のある不祥事防止対策を策定するために経営者は何に留意すべきかについて、聞いた。

「バブル期の保険不正」企業不祥事との関わりの原点

不祥事をいかに防ぐかについてお話しする前に、まずは私のバックグランドから説明させていただきましょう。私と企業不祥事との関係は、かれこれ、30年以上の長きになります。そのきっかけとなったのが、勤務先の安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)で1990年、社長室(当時、現在の経営企画部)に在籍していたことでした。当時はバブル最盛期で、銀行、証券、保険会社など金融機関には多額の資金が流れ込み、空前の繫栄を謳歌していた時代。そんな虚飾の陰で、企業では金銭にまつわる大きな不祥事が続発していたのです。

その頃の損害保険業界では、「積立保険」と呼ばれる、火災や傷害保険をもとに貯蓄的要素を組み入れて5年後の満期時に満期返戻金を受け取れる商品が人気を博していました。しかも、積立保険は契約時に保険料を全額支払うケースが多く、損保側が受け取る保険料も大きなものになっていました。それを社員や代理店が横領してしまうといった「事故」(社内ではそう呼ばれていました)が相当数発生していたのです。

社長室に在籍していた私は、会社全般の業務を横断的に見る立場にあったので、事故報告があるたびに「これはマズい状況だ」と思いました。人と組織が“時代”にうまく適合できていない――そう直感したのです。それまでの社内の金銭不祥事は、大体は事務所の金庫に収められた金銭をくすねるとか、その程度のもので、金額的にはあまり大きくなかった。ところが、積立保険商品をめぐる事故の場合、1件当たりの被害額が100万円、時には1000万円単位という多額なものになり、その手口が非常に巧妙になっており、解明するのが難しかったのです。

当時、社員の不祥事を所管していたのは人事部。人事部が調査し、その結果をもって社員の懲戒処分を課していました。しかし、積立保険商品の場合、とてもじゃないが、人事部が片手間に調べられるような不祥事ではない。やはり、新しい組織を作って検査なり調査をしっかりと行う仕組みが必要だと痛感した私が、その構想を取締役会に提案したところ、通ってしまったのです。

通ったのはいいのですが、「誰がやるんだ?」という話になりました。確かに、それまで検査部という組織はありましたが、年配者が多く、待機ポストに近かった。検査の専門的スキルがあるわけではなく、ましてや頻発する複雑で巧妙な横領の手口を解明する仕事など、誰もできません。結果、当時の社長から言われたのが「(新しい組織を)作っても誰もやる奴がいないみたいだから、(言い出しっぺの)お前がやれ」。

検査部の中に特別に「検査管理室」という部署ができ、室長にさせられました。検査管理室の業務は通常の内部監査をするのではなく、不正の調査だけをするという部署。不正調査を1年間続けましたが、やってみると凄いことばかりでした。こうして私は企業不祥事のど真ん中の世界に入ることになったわけです。

バブル崩壊後は新設されたコンプライアンス部の部長をしたり、複雑で解明の難しい不祥事の調査を特命的に行うなど、その後も不祥事との関わりが続きました。私が役員になったときには、人事、総務担当の傍ら、やはり内部監査部、コンプライアンス部、リスク管理部などの業務も担当役員として3年程管掌しました。

私を不祥事研究に誘った「経営倫理」との出会い …
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