検索
主なテーマ一覧

富士フイルム元CFOが伝授「不祥事を繰り返す企業」を変革する方法#3《最終回》

三菱電機、神戸製鋼……
不祥事を繰り返す企業に“企業文化”はあったのか

#2では不正・不祥事を引き起こした企業約60社を分類しましたが、前回記事の中で赤字で示したのが不祥事を何度も引き起こしている企業です。三菱電機、神戸製鋼所、三菱自動車はそれぞれ複数回、不祥事を繰り返しています。

まず、三菱電機のケースと見てみますと、同社は「私たちの価値観」として「社会規範及び法令を遵守し、高い倫理観を持ち行動する」と掲げています。監査委員長に元検事総長を起用し、内部統制は60人体制で行っていた。制度がしっかりしていながら、35年以上も検査不正などを続けていたわけです。これらの原因は、歴代経営陣の不作為、徹底したノルマ主義、実力会長の存在、事業別収益のプレッシャーなどです。

さらに三菱電機では、あろうことか、不正調査のアンケートを上司が回答妨害していたことも発覚しています。検査不正問題を調べていた調査委員会のアンケートについて、回答を事前に見せるよう部下に指示する管理職が複数人いるという有り様でした。「お前の肩には従業員とその家族1000人以上の生活が懸かっている」などと調査妨害の指示もしていたとされます。調査委員長の弁護士が、内向きな企業風土は「簡単にはなかなか変わらない」と指摘しているほどです。

また、同じく不祥事を繰り返してきた神戸製鋼所は、絶えず赤字と黒字を行ったり来たりする業績の会社でした。3期連続赤字であれば、本来なら社長交代の動議が出されてもおかしくない。しかし、神戸製鋼は赤字が続いても、歴代のトップによる経営改善効果は不十分であったと言わざるを得ません。40年間も不正を続けてきてしまったのは、神戸製鋼は2016年に監査等委員会設置会社に移行しているが、そもそも経営トップをきちんと指名する機能が作動していなかった証左と言えるでしょう。

神戸製鋼だけでなく、不祥事を続ける企業はどんな立派な経営理念を持っていたとしても、トップがその経営理念を常日頃から口にするようなことはないとしたならば、末端にまで浸透していきません。「企業文化」がないに等しい状態に陥っているということなのです。ちなみに、そんな神戸製鋼ではありますが、同社はその後、抜本的な構造改革運動を展開しています。

「シームレスな人材マネジメント・システム」で“将来の…
1 2

ランキング記事

【PR】riskey リスクアラートシステム
【PR】内部通報サービス無料オンデマンドセミナー

ピックアップ

  1. 【子会社ガバナンス#4】加登豊名古屋商科大学教授が語る「子会社業績向上の秘策」…

    (#3から続く)今回の#4では、経営学者で現在、名古屋商科大学大学院マネジメント研究科で教授を務める加登豊氏をインタビュー。日本の企業グルー…

  2. 【子会社ガバナンス#3】「親会社からの天下り」人事が子会社の成長を阻害する…

    #1、#2では実例を引き合いに出して、子会社のコーポレートガバナンスが機能不全に陥り、ひいてはグループ全体のガバナンスを阻害しかねない状況を…

  3. 【子会社ガバナンス#2】適切な事業ポートフォリオの構築が難しい理由…

    #1では大手企業の不動産子会社を例に、子会社のガバナンス不全があわや不祥事を生み出しかねない危険性を伝えた。続く#2では、新設子会社、あるい…

  4. 【子会社ガバナンス#1】大企業の「不動産子会社」で不祥事が起きた背景…

    子会社・関連会社までを含めたグループ全体のコーポレートガバナンスが求められる大手企業。一方、大手企業グループには必ずと言っていいほど、不動産…

  5. 「リスク情報収集」を自動化する最適なネット検索ツールとは…

    (前編から続く)リスク情報の収集には、時として正確性よりもスピードが求められる。その際、ネット上の情報をいかに集めるかが、勝負の分かれ目とな…

  6. 企業担当者を悩ます「リスク情報収集」の死角…

    「仕事とはいえ、パソコンに向かい合ってネット上で関係先のリスク情報をチェックするのは、身心ともに疲れ果ててしまう」――。あるメーカーで与信管…

あなたにおすすめ

【PR】内部通報サービスDQヘルプライン
【PR】日本公認不正検査士協会 ACFE
【PR】DQ反社チェックサービス