超長期在任トップ「再任賛成率」ランキング#1 上位企業編【株主総会2023】
代表取締役の在任期間が長期にわたる上場企業に対するステークホルダーの評価が二極化している。今年2023年7月末までに定時株主総会を終えた上場企業のうち、代表取締役の在任期間が30年を超える約50社の半数が取締役再任の賛成率90%を超えた一方、前回より20ポイント近く賛成率を減らし、60%台にとどまる選任結果の経営者も相次いだ。資本効率の悪さや女性取締役登用の遅れを理由に、機関投資家を中心に経営トップの信任を否定する動きが広まっている――。#1記事では、株主から圧倒的支持を得た“超長期在任トップ”君臨企業を概観する。
在任52年「ノエビアHD大倉昊会長」は99%超の賛成率
長期在任の経営トップのうち最も賛成率が高かったのは化粧品メーカー、ノエビアホールディングス(HD)の創業者である大倉昊(ひろし)会長(87)だ。賛成率は実に99.29%で、前回よりも0.12ポイント上積みした。
航空機関連部品、医療機器および日用品などの輸入・販売を振り出しに1964年に創業したノエビア。その後、1970年代に化粧品製造に転じて基礎化粧品を強固なネットワークで販売、安定した収益を確保している創業者に対する愛用者の信頼度は高い。筆頭株主は親族が経営する資産管理会社「エヌ・アイ・アイ」で36.25%を保有し、これだけで拒否権を持つ。しかも、昊会長と長男の俊(たかし)社長(59)の持ち分を合わせると、全議決権の半分に迫る。
ノエビアは典型的な同族会社ではあるものの、株価純資産倍率(PBR)は3倍を上回り、自己資本利益率(ROE)は14.6%(2022年9月)と高水準だ。女性取締役(監査役含む)は6人と、女性比率43%を誇る。ちなみに全員、弁護士である。一族の持ち分という“基礎票”もさることながら、コーポレートガバナンス・コードなど、機関投資家の厳しいチェックを寄せ付けない多様性も備えていると言えよう。
一方、賛成率2位(98.66%)は北海道発祥で、東北、北関東を中心に食品スーパーマーケットなどを展開するアークスの横山清社長(88)。1961年に前身のダイマルスーパーに入社、1985年4月に代表取締役社長に就任して以来、38年の長きにわたってトップを務めている。アークスはPBRが1倍を大きく下回っていることから考えると、横山氏は余人をもって代えがたい社長ということなのだろう。しかし、その齢はすでに米寿である。
ところで、横山社長自身は第2位の株主(5.43%)ではあるものの、創業家出身ではない。なお、賛成率上位10社を見ると、このアークスと次ページで後述するセーレンを除いて、創業者もしくは創業家一族が経営トップを占めている。詳しくは次ページの、賛成率が高かった長期在任トップのランキング表をご覧いただきたい。
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