アクティビスト「丸木強」が振り返る“注目総会”問題の核心#2【株主総会2023】

コスモHD「MOM決議」が炙り出した“安定株主”問題
(#1から続く)――今年、注目を集めた株主総会を振り返ってみますと、そのひとつにコスモエネルギーホールディングス(HD)の総会が挙げられます。投資家の村上世彰氏が率いた旧村上ファンド系の投資会社「シティインデックスイレブンス」との対立が激化し、コスモは買収防衛策を発表しました。コスモ側が採用したのは、シティ側の議決権を排除して一般株主だけで採決を行う「マジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)」と呼ばれる“奇策”でした。この手法の導入には大物弁護士やアドバイザー会社による助言があったとされています。総会当日、買収防衛策は賛成比率59.54%で可決されました。コスモHD側が繰り出したMOMをどう評価されますか?
丸木強:本来、オーナーであり主権者である株主から経営やその監督を委託されている人たちが取締役であるわけです。買収防衛策を助言した弁護士やアドバイザー会社への報酬は、会社の資産から出されています。つまり、それらの報酬は株主の資産から拠出されているわけです。株主価値の向上につながるような提案を弁護士やアドバイザー会社が行うのであれば、まったく問題はありません。言い換えれば、買収防衛策が導入されて株価が上がるのであれば、何ら問題はないのです。
しかし、買収防衛策を導入した会社のほとんどのケースでは株価が下がっています。なぜ、株価を下げるような助言をする面々に株主の資産から報酬を出さないといけないのか。我々は非常におかしなことだと思っていますし、そういうビジネスは上場企業に集る“寄生虫”と言っても過言ではないでしょう。
――ただし、シティ以外の株主で採決すると、上記のとおり、過半数を上回りました。
丸木:もうひとつ問題なのは、やはり、このシティ以外の株主の投票行動です。株主として議案を判断して、なぜ賛成してしまうのか。株主平等の原則で法律上、MOMという手法がおかしいのではないかという議論は当然、あります。そういう法律上の問題とは別に、実務上の問題として賛成したら株価が下がることが容易に予見できたのになぜ賛成したのでしょうか。
もっとも、買収防衛策導入の議決について、シティが排除されるなら、経営者の味方をする安定株主である政策保有株主も排除されるべきでしょう。少なくとも、それが上場企業であれば、政策保有株式の株数はほぼ開示されているわけですから、シティ側と同様に排除することは実務的にも可能です。しかし、現実に議決から排除することは難しい。経営者側は「ビジネスを円滑にするため、または、その関係維持するために自社株を持ってもらっているのであって、安定株主目的ではない」などと宣っています。
この発言にはウソがあると思っています。我々が「なぜ、株を持っていたら、ビジネスが円滑になり、関係が維持できるようになるのですか?」「株式を保有していることと、取引とはどういう関係があるのですか?」と聞いても、この疑問にまともに答えられる経営者に会ったことはありません。株を持ち合わなくても取引は出来るのです。提供する商品やサービスの質が高ければ取引先に選んでいただけるはずです。経営者として、まず努力すべきはこの点ではないでしょうか。
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