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大正製薬MBO「株主総会トップ再任賛成率」の伏線

女性役員ゼロは賛成率下落の要因か?

光通信「過去最高益」も賛成率低下のなぜ

JPXプレミアム150銘柄で、情報通信業持ち株会社に分類される光通信の重田康光会長(58)の賛成率も約70%と低迷している。事業展開は、かつての携帯電話や事務機器から宅配水、電力の販売へ変貌している光通信。ガバナンスの状況を見ても、女性取締役は2人いる。しかも、PBRは1.79倍。2023年3月期決算は売上高、営業利益、純利益がそろって過去最高を記録し、年間配当も増配した。なのに、どうして重田会長の賛成率が低調なのか。

現在は若干、所有割合が変動しているが、2023年3月末時点の光通信の上位株主の構成を見てみよう。筆頭株主は創業者、重田会長の資産管理を担う「有限会社光パワー」で、29.61%を保有する。また、同じく重田会長が出資する「合同会社光パワー本家」「合同会社光パワーZ」、そして重田会長本人のほか、長男の光時氏が代表取締役を務める「鹿児島東インド会社」も合わせると、保有割合は45.82%だ。GMOと同様、トップ長期在任企業の典型的な株式構成と言える。

株主構成が重田会長の再任賛成率を直接的に下げているかは不明だが、実際、長期トップ在任企業で賛成率下位の多くは経営者および一族の保有割合が高い。

一族保有割合が高い企業でも賛成率低調

建設・土地活用・不動産事業のスターツコーポレーションは、村石久二会長(79)が創業者で、一族の保有割合は26.51%に上る(前期末時点、以下同)。2023年3月期の業績も堅調ながら、村石会長の賛成率は66.92%に沈んだ。

また、大阪に本社を置く建築用塗料・建築仕上げ材製造、エスケー化研は創業者で91歳になる藤井實会長が依然として代表権を持つ。株主構成は、資産管理団体「四国興産有限会社」が31.9%を保有する筆頭株主で、一族の保有分を合わせると41.2%に上る。藤井会長の賛成率は75.79%だった。

呼吸・循環器系医療機器製造、フクダ電子は創業者の長男である福田孝太郎会長(78)が26.32%を保有する筆頭株主で、親族や財団と併せると30%を超える。なお、福田会長の賛成率は77.83%。

消費者金融のアイフルは、福田吉孝会長(76)が創業者で、資産管理団体や親族らで37.52%を保有する。賛成率は10ポイント以上落として78.55%だった。

エスケー化研とアイフル、フクダ電子に加えて、鶴正登会長(75)の賛成率が10ポイント以上下落した自動車用オイルシールのNOKは女性取締役がゼロ。経営トップの賛成率上昇を妨げる要因がそろっている。

また、さらなるROE上昇圧力としての賛成率低下もありそうだ。

エレクトロニクス商社、加賀電子は創業者の塚本勲会長(80)への賛成率が79.38%と、前回の90%台から急落した。ただ、一族の保有割合は10%に満たず、監査役ながら女性役員も1人いる。さらに買収防衛策も導入しておらず、賛成率低下の原因は不明だ。

ただ、加賀電子は取引先など94社の政策保有株を持つ。政策保有株の合計は44億円超で、純資産の3.4%に相当する。大手議決権行使助言会社は政策保有株が純資産に占める割合が10%を超える場合、経営トップの選任案に反対するよう求めている。加賀電子はこの基準に抵触するわけではない。ただ、ROEを押し下げる要因となり得る政策保有株の評価額「その他有価証券評価差額金」を小さくするためには、政策保有株は少ない方がよい。加賀電子のケースは株主のROE指向の高まりを示す兆候と言えようか。

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