【内部通報特集#4】公益通報制度の番人「消費者庁」は何をしているのか
最高裁が「公益通報者勝訴」の注目判決
この1年で実際に内部通報が端緒となって企業の不祥事が明らかになった事例は少なくない。
例えば、エネルギー事業などを手がけるTOKAIホールディングスのケースも内部通報がきっかけだった。2022年9月15日に開いた取締役会で、不適切な経費の使用が発覚したとして鴇田勝彦社長(当時)を解職。これを受けて弁護士などで作る特別調査委員会が、2016年4月からの約6年半の間に鴇田氏が行った会食や宿泊などの経費を調査した結果、業務との関連に疑いがある経費として少なくとも253件、1100万円余りが指摘された。2022年12月に公表された調査報告書によると、鴇田氏は「会社の保養施設で女性コンパニオンと混浴を繰り返した」とし、2022年8月まで出張コンパニオンを手配した回数は40回を超え、ほぼ毎回、露天風呂で混浴が行われていたという。
また、今年2023年4月には公益通報に絡んで注目すべき裁判所の判断が示されている。
京都市の児童養護施設で起きた性的虐待事件を内部告発するため、児童に関する相談記録を持ち出した男性職員が、市から受けた懲戒処分は違法などとして、市に損害賠償を求めた訴訟の判決が4月27日、京都地裁であり、池田知子裁判長は男性職員の訴えを認めて京都市に約220万円の支払いを命じたのだ。
判決などによると、男性は児童相談所に勤務していた2015年、左京区の児童養護施設で少女が施設長から性的虐待を受けたとする母親からの相談が放置されているとして、市の公益通報窓口に通報。その際、男性が担当外の少女の記録を閲覧して自宅に持ち帰ったとして、市は停職3日の懲戒処分にした。
男性が処分取り消しを求めた別の訴訟で、一審の京都地裁と二審の大阪高裁は、記録の持ち出しには公益通報の目的があったと認め、「停職3日は重きに失する」として処分は違法と判断。2021年1月に最高裁判所が市の上告受理申し立てを退け、男性職員の勝訴が確定していた。
判決で池田裁判長は、改めて市の処分の違法性を認定。処分がなければ男性職員が最高裁まで訴訟を続ける必要はなかったとして、処分取り消し訴訟にかかった弁護士費用と慰謝料の支払いを命じた。判決後、京都市内で会見した男性職員は「公益通報制度の運用の問題性について訴えたかった。制度は本来『不都合な事実を歓迎する』もの。通報者の名前が漏れるなど、今の運用には問題がある」と話した。
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