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フジテック#5 オアシスの揺さぶりに墓穴を掘った創業家【株主総会2023】

オアシスを利した「米議決権助言会社」による批判

西村あさひ法律事務所は、かねてフジテックと取引関係にある。オアシスはこれを批判して真に独立した弁護士の起用を求めると、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラスルイスの米議決権助言会社は全面的に賛同した。両者のレポートは、透明性を確保しようとはしないフジテック取締役会の怠慢を批判するものだった。

グラスルイスは次のようにレポートした(ただし、以下の文面はオアシスによる翻訳であり、オアシスのリリースに掲載されたものである)。

〈関連当事者取引の多くが、完全にそうではなかったとしても、主として、内山高一氏、そのほかの内山家、または、内山家の関連団体の利益のために行われてきたとみられる。また、フジテックが発表した調査結果は、一連の取引がフジテックとその株主の利益のために行われたのか、或いは、内山高一氏と、その家族及び関連会社の利益のために行われたのかについて、説得力のある調査をしていないと見做している〉〈内山高一氏の再任に反対することは正当であり、かつ、同氏の再任反対は一連の問題への株主の不満と懸念を伝える最適な手段である〉(オアシスのプレスリリース 2022年6月9日)

〈説得力のある調査をしていない〉というグラスルイスの批判は、第三者委員会が設置されないことへの批判だった。

内山は狼狽したことだろう。6月17日、追い詰められたフジテックは突然、第三者委員会の立ち上げを発表する。定時株主総会のわずか6日前のこと。さらに6月24日の株主総会のわずか1時間前に内山は社長を退任し、自身の取締役選任議案を撤回した。

その理由は、〈(第三者委員会の調査終了まで)取締役に就任しない〉とし、調査終了によって潔白が証明された際に改めて〈取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき〉というものだった。

総会に出席しない株主の議決権行使は、総会前日までにネットや郵送などで行われるため、フジテック経営陣は株主名簿管理人(信託銀行や証券会社が請け負う)から事前に当日行使分を除いたおおよその大勢を知ることも可能だったと見られている。内山は、事前に敗北を知っていたのではないか。そして、総会後の取締役会で非取締役の会長に就いた。第三者委員会を自身の保身の口実とした。

こんな悪手を選ぶまでに混乱した内山とフジテックの取締役会の信用が灰燼に帰すのは、火を見るよりも明らかだった。

内山高一社長退任直前の定時株主総会招集通知(2022年6月)
(#4から続く)フジテック創業家の3代目社長、内山高一に対…
第三者委員会を“自己保身”の具とする日本の経営者たち…
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