「政治資金の監査」公認会計士協会も注視せよ!【ガバナンス時評#17】
あまりにお粗末だった政倫審
自民党の政治資金問題に関し、2月29日、3月1日に衆議院の政治倫理審査会が行われた。パーティー券の派閥のノルマ超過分の売り上げの還流と、政治資金報告書への不記載が組織的に行われた安倍派の重鎮4名に加え、岸田文雄首相自ら出席し質問に答えるということで注目されはしたが、その中身はお粗末なものだった(#14、#15参照)。
各議員は与野党の議員が務める質問者からの質問に答えてはいたが、新しい情報はなく、その回答も「閣内にいたから派閥の会議には出席していない、だから詳細はわからない」「若手から還流を再開してほしいとの声があったと聞いているが、誰がどのように再開を決めたかは把握していない」などの発言に終始した。
問題発覚から2カ月以上が経っているのに、経緯の詳細も把握していなければ、説明に際する客観的なデータや記録も示さない。矛盾を突くような質問には「手元に資料がないのでお答えできない」と言うばかり。民間企業の説明であれば、各メディアから猛烈な批判を受け、上場企業なら株価が暴落するであろう内容だった。
そもそも、「身内」で利害関係者の自民党議員が質問・審査する側に参加しているのも、質疑の公正性が疑われ、通常の倫理審査ではありえない事態だ。
単純に帳簿上の問題ということで捉えても、帳簿外で処理を行っている資金に関しては、完全に意図的な“裏金づくり”と言わざるを得ない。長年にわたり、特定の派閥が組織的に、しかも「危ないのでは」と安倍晋三元総理が指摘して一度は取りやめたという情報まであるにもかかわらず、還流を再開して100人近くの議員の事務所が同じ処理を行っていたとすれば、これは悪質で「意図的な裏金づくり」以外の何物でもないだろう。
各議員は「派閥の指示に従った」と責任逃れをしようとしているが、脱法行為を推奨されて唯々諾々と従っておきながら、何の処罰も受けないということは本来、あり得ない。
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