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オリンパス2人の“外国人トップ”に見る「ダイバーシティ」の深淵【八田進二のガバナンス時評#20】

八田進二:青山学院大学名誉教授

違法薬物「MDMA」を譲り受けた容疑で、オリンパスの社長兼CEO(最高経営責任者)だったシュテファン・カウフマン氏が書類送検されるという事件がこの11月に発生した。カウフマン氏の出身国であるドイツでも合成麻薬は違法だが、大麻は今年に入って解禁されている。氏の認識がどのようなものであったかは不明だが、日独間の法律をめぐる認識のギャップがあった可能性は否定できない。

昨今、企業社会においてダイバーシティ(多様性)が奨励され、外国人や女性の役員、社外取締役も増えてきた。企業活動には多様なステークホルダー、つまり社会のさまざまな立場にある利害関係者が存在する。そうである以上、経営側にも多様性が求められるためだ。

現在のところ、外国人といっても欧米人が中心であるが、そもそも日本語の壁が立ち塞がる。片や女性の経営人材は旺盛な社外取需要に対する供給の圧倒的不足で、一人が何社もの社外取を兼務する例も多い。そのような状況で果たして望ましいダイバーシティは実現していると言えるのか、そしてコーポレートガバナンスは期待通りに機能しているのか。これを問わねばなるまい。

さらに、今後ますます真のダイバーシティを進めるには、考えなければならないことがある。

まずは外国人登用のケースだ。

オリンパスを震撼させた“もうひとり”の外国人社長

まずは「外国人登用」について、考えてみよう。

冒頭のオリンパス元社長をめぐる薬物事件のように、出身国と日本の法律の違いによって、問題が顕在化するケースだ。薬物ひとつとっても、ドイツだけでなく、大麻の使用は合法である国も増えてきており、日本では違法であることを知らずに法を犯してしまうケースも起き得るだろう。日本企業は外国人人材に対して、どこまで日本の法律や慣習を教育、指導すべきなのか。その線引きは意外と難しい。

もうひとつは習俗、あるいは倫理観についてである。こちらのほうは、さらに難度が高い。

現在は欧米人、中でも白人が中心であるため、それほど問題視されていないが、今後、アジア圏や中東出身の外国人が日本企業の役員として登用されるケースも増えていくだろう。

その際、伝統的な髪形や服装、タトゥーの有無などが問われることになる。私自身がそうした外見や習俗の違いで差別心を持つことはないが、日本社会に理解があるかと言えば、かなり心もとない。「面食らってしまう」「悪感情を覚える」日本人はまだまだ少なくないだろう。

さらには、倫理観の違いもある。こちらも奇しくもオリンパスに関連するが、2011年、巨額の損失隠し疑惑をめぐる報道の直後に、社長を解任されたイギリス出身のマイケル・ウッドフォード氏のケースが挙げられる。

解任理由は当初、会社より「日本の風土に合わず、和を保てない」などともっともらしく解説されたが、実際はそうではなかった。

次第に損失隠しの報道が事実であることが明らかになり、会社と株主に損害を与えたとして会長・社長を務めた菊川剛氏および副社長だった森久志氏の引責辞任、逮捕へと至る。だが、当初は取締役会では逆にウッドフォード氏の解任が発表された、というのが事の顛末だったのである。

ウッドフォード氏は自らの倫理観に基づき、会社(日本人経営層)に一切忖度することなく、欧米メディアに「自身の解任理由は社内の不祥事を調査、会長らを解任しようとして返り討ちに遭った」と話した。

日本式のやり方をウッドフォード氏はその倫理観で撥ね付けたのである。彼は不正告発の重要性などについて講演し、今も世界各地を回っているという。

突然、社長がカミングアウトしたら… 一方、女性…
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