検索
主なテーマ一覧

自民党政治資金「隠蔽・還流」は会計軽視の象徴だ【ガバナンス時評#14】

パーティー券購入不記載、企業側にも好都合

昨年末に明るみに出た自民党・安倍派(清和会)の政治資金問題は、年明け後の今も燻り続けている。2022年までの5年間で派閥から4800万円余りのキックバックを受けたとされる池田佳隆衆院議員は証拠隠滅を図り、秘書とともに逮捕された。その後、岸田派(宏池会)でも収支報告書未記載の問題が浮上すると、1月19日には自民党総裁である岸田文雄首相が自身の派閥の解散を突如明言し、これに続いて安倍派、また同様の問題を抱えていた二階派(志帥会)が解散を決めた。

この政治資金問題については、「政治にはカネがかかる」「派閥は必要だ」など論点が拡散しているが、論点の第一は当事者の「アカウンタビリティ(Accountability)の欠如」だろう。アカウンタビリティを「会計責任」と訳してしまうと、単なる会計上・帳簿上の話だと誤認してしまうが、本来アカウンタビリティとは、企業等の経済活動の実態について、財務諸表という客観的な数字情報を用いて説明・報告する際に履行すべき「説明責任」を指す用語である。どこからいくらの収入があり、何にいくら使ったのか。そうした経済行為全体の流れを審らかにして初めて責任を取れるのだが、そうした意識が議員にはまったく欠落していると言わざるを得ない。

資金が移動している以上、そのすべてについて正しい処理をして、記録を残し、必要な説明を行うというのが会計の原点であり、基本である。だが、政治家にはこうした発想さえ、ないのかもしれない。

そもそもの政治資金規正法自体が抜け穴だらけである。政治資金規正法では、政治資金パーティーのうち、1回のパーティーにおいて20万円を超える場合のみ、購入者の氏名や金額を収支報告書に記載するよう義務付けている。つまり、20万円以下の購入者は収支報告書に名前を記載する必要がない。誰が、あるいは、どの会社がいくらパーティー券(パー券)を購入したのか、追跡できない仕組みが元より許されているのである。

これはまとまった額のパー券を購入する側にとっても“ありがたい仕組み”になっている。特に、企業や業界団体がパー券を購入するのは、その政治家や政党・派閥の政治理念に共鳴したからというより、「自社に都合のいい政策を提言してほしい」「自分の業界に不利な規制をつくらないでほしい」からこそ、というのが通り相場である。そんな説明しにくい背景がある以上、名前が出ないことは、購入する側にとってもありがたいのだ。

そして寄付に関しては、年間5万円以下の額であれば、やはり収支報告書への記載は不要となっている。さらには領収書の問題で、民間企業や個人事業主であれば1円たりとも誤魔化しが効かないにもかかわらず、政治資金に関しては1万円以上の支出に限り明細の提出が求められている。

「数字は嘘言わぬ」を捻じ曲げた議員立法 これは…
1 2

ランキング記事

【東京御茶ノ水開催】10月29日(火)13:00~【DQヘルプライン シンポジウム】内部通報制度の限界と対策
【PR】10月29日(火)13:00~【DQヘルプライン シンポジウム】内部通報制度の限界と対策

ピックアップ

  1. 【2024年10月24日「適時開示ピックアップ」】森下仁丹、奥村組、おきなわFG、千葉銀行、トゥエン…

    10月24日木曜日の東京株式市場は小幅ながらも、4日ぶりに反発した。日経平均株価の終値は前日より38円高い3万8143円だった。24日の適時…

  2. 三菱UFJアセットマネジメントが「選任反対」した取締役・監査役リスト#2《4000~6000番台企業…

    後藤逸郎:ジャーナリスト + Governance Q特集班 賛成率が最も低かった電気興業社長 (#1から続く)続いて上場企業の証券コード4…

  3. 藤堂高虎「何をするにもその日限りだと思えば、自然と覚悟が決まって最善の選択ができるようになる」の巻【…

    栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「何をするにもその日限りだと思えば、自然と覚悟が決まって最善の選…

  4. 【2024年10月23日「適時開示ピックアップ」】日本取引所グループ、東京メトロ、I-ne、伊藤忠商…

    10月23日水曜日の東京株式市場は3日連続で続落した。日経平均株価は前日比で307円安い3万8104円。27日投開票の衆院選で「与党苦戦」と…

  5. 【11/22(金)15時 無料ウェビナー】医薬品の品質不正《品質不正とガバナンスの最前線・連続ウェビ…

    本誌「Governance Q」と日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)共催無料連続ウェビナー「品質不正とガバナンスの最前線:公認不…

  6. 大谷翔平を嵌めた「水原一平」はアメリカでどんな施設に収監される?【海外法務リスク#4】…

    有吉功一:ジャーナリスト、元時事通信社記者 (前回までの記事はこちらから)米メジャーリーグ、大谷翔平選手の専属通訳を務めた水原一平氏(39)…

あなたにおすすめ

【PR】内部通報サービスDQヘルプライン
【PR】日本公認不正検査士協会 ACFE
【PR】DQ反社チェックサービス