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大谷翔平の活躍に思う「スポーツ」に求められるガバナンスとインテグリティ【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#4】

報酬は交通費だけの「インテグリティ委員会」の面白さとは

この姿勢を言い表すのに最もふさわしい言葉が「インテグリティ」である。

この言葉の意味を説明する前に、先に挙げた私が委員を務めるラグビーチームの委員会について、お話ししておきたい。この委員会は、大学のラクビーチームに所属する学生を対象としたコンプライアンス研修の実施、大学内で生じた不祥事に対する当該大学による処分・再発防止策等について、報告を受けた加盟団体として当該処分・再発防止策等についてのモニタリングの実施、加盟団体トップから求められる場合の法的検討などが主な業務となっている。

中でもコンプライアンス研修は、加盟団体に属する大学の会場で行われ、地方への出張となり一日仕事となるが、大学の加盟団体や学生を対象とする業務は、企業に関わる業務と異なる面白さが発見できることに意義を感じている。費用は交通費のみお支払いいただいており、その委員会の名称こそ、「インテグリティ委員会」なのである。

インテグリティは日本においては往々にして、誠実さ、倫理性、高潔さという意味で使われるが、ガバナンス・企業(組織)論、法律学などでは、完全性、無謬性、首尾一貫性いう意味で理解して初めて、インテグリティが使われている文脈の含意が理解できると考えられる。

ドジャーズに移籍して1年、大谷の姿勢がドジャーズに所属する他の選手に大きな影響を与え、チームを著しくイノベーティブに変容させたことはメディアの様々な報道の通りだが、彼の首尾一貫した姿勢は、法律家の私からすれば、まさにインテグリティというべきものにほかならない。

(隔週連載、#5は11月14日公開予定)

競技人生が短い学生が“熟達の勝者”となるように …
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