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【2025年2月25日「適時開示ピックアップ」】田中化学研究所、ヨシムラ・フードHD、トヨタ、ビックカメラ、日産証券グループ

連休明けの2月25日火曜日の東京株式市場は反落した。日経平均株価の終値は前日比で539円安い3万8237円だった。円高ドル安が重しとなった格好だ。そんな25日の適時開示は279件。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。

住化子会社「田中化学研究所」スウェーデン取引先“経営破綻”で20億円債権が回収不能か

東証スタンダード上場でリチウム電池などを手掛ける田中化学研究所(福井・福井市)は、スウェーデンの取引先企業が米国の連邦破産法第 11 章(チャプター11)の適用を裁判所に申請したことを受け、同社に対する約20億円分の売掛債権が取り立ての不能、または遅延するおそれがあることを発表した。

このスウェーデン企業はNorthvolt(ノースボルト)Ett AB社で、その親会社で新興の車載電池メーカー、ノースボルト社が昨年11月に経営破綻。同社が田中化学研究所の債権を連帯保証していた。

一方、田中化学研究所は住友化学の子会社で、2024年3月期の売上高は479億円、営業利益は27億円。今回の売掛債権20億円は純資産の11%に当たる。

田中化学研究所は「25年3月期に業績に与える影響は軽微」としているが、グローバルな事業展開はリスクが隣り合わせと言える。

【田中化学研究所 】債権の取立不能又は取立遅延のおそれに関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250225581864.pdf

「ヨシムラ・フードHD」子会社社長インサイダーで再発防止策

東証プライムで中小の食品会社のM&A(合併・買収)を手掛けるヨシムラ・フード・ホールディングス(HD、東京・内幸町)は、子会社役員が1月、金融商品取引法違反(インサイダー取引)で札幌地検に起訴されたことを受け、再発防止策を策定した。

同事件では、子会社のマルキチ(北海道・網走市)元社長が23年5月、道内の水産加工会社をヨシムラが買い付けることを知うったうえでヨシムラ株7000万円相当を買い付けるなどのインサイダー取引を行ったとされる。

これを受け、ヨシムラは内部者取引(インサイダー)規定を改定し、関連する株式の売買の事前申請制度を全社員(子会社を含む)に適用する。また、M&Aを実施する際、相手にヨシムラ側の株式の取引規定を周知し、誓約書を取得するという。

相次ぐインサイダー取引。再発防止策は当然として、コーポレートガバナンスの構築が急務と言える。

【ヨシムラ・フード・ホールディングス】当社株式の内部者取引に関する再発防止策の策定について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250217577108.pdf

「トヨタ」が監査等委員会設置会社に移行

東証プライムのトヨタ自動車は今年6月の株主総会をもって監査役設置会社から監査等委員会設置会社に移行すると発表した。監督機能の強化と意思決定の迅速化を理由に挙げている。

6月以降、監査等委員は計4人となる。現在の監査役6人のうち、中日新聞の元経済部記者、長田弘己氏ら2人が監査等委員に横滑り。監査等委員4人のうち3人が社外取締役となる。

トヨタは《コーポレートガバナンスの変遷》なる資料も添付。2011年までは取締役27人という体制で、13年に社外取締役を登用、16年からは取締役を絞り込み、10人体制となっている。今回の変更で社外取が1人増え、「独立社外5人・社内5人」の体制になる。ちなみに00年代前半には、取締役が55人もいた時期もあった。

監査等委員会設置会社は15年から導入された制度で、2月25日現在で上場会社の43%に当たる1624社。一方、監査役設置会社は55%の2102社で、ガバナンスの有効性が高いとされる指名委員会等設置会社はわずか2%の95社という状況だ。

トヨタが監査等委員会設置会社になったことで、監査役設置会社からの移行が加速する可能性がある。

【トヨタ自動車】監査等委員会設置会社への移行に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250225581793.pdf

下請法違反報道の「ビックカメラ」が“現在調査中”コメント

東証プライムのビックカメラ(東京・豊島区)は「当社に関する一部報道について」とのリリースを出した。

一部報道とは、日本経済新聞や朝日新聞など新聞各紙が2月25日付の朝刊に掲載した記事のことで、公正取引委員会がビックカメラの下請法違反を認定し、勧告を行う方針と伝えている。同社がライベートブランド(PB)の製造を委託している約50社に対し、2023年夏以降、代金を不当に減額したという内容だ。

ビックカメラはリリースで「調査を受けているのは事実」と認める一方で、「現在調査中であり、当社から開示すべき事項はない」としている。

家電量販業界では、23年6月には東証プライムのノジマもPBの製造委託業者に不当に減額したとして公正取委員会から再発防止を求める勧告を受けている。

【ビックカメラ】当社に関する一部報道について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250224581056.pdf

「日産証券グループ」不正アクセスで一部のサービス停止

東証スタンダードの日産証券グループ(東京・銀座)は、2月24日に不正アクセスを受け、サービスの一部を停止していると発表した。顧客情報の漏洩は確認されていない。

停止しているのは、デリバティブ取引向けにリアルタイムで情報を提供するサービスやお問い合わせフォーム(口座開設、資料請求、お問い合わせ等)などで、現在、主要なサーバーを隔離中という。

金融業においてシステムの強靭性は事業の根幹をなすだけに今後の動向が注目だ。

【日産証券グループ 】不正アクセスによるサービスの一部停止に関するお知らせ(第一報)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250225581145.pdf

(平日連載、2月26日公表分に続く

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