【2025年2月12日「適時開示ピックアップ」】日揮、ミダックHD、JDI、ヤマハ発動機、サンウェルズ

飛び石連休が明けた2月12日水曜日の東京株式市場は続伸した。日経平均株価は前日から162円上昇し、3万8963円で終えた。円安傾向や、前日の米ダウ工業株平均の値上がりを足掛かりに上昇。そんな2月12日の適時開示は、2025年3月期第3四半期決算の発表もあって964件と多かった。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。
「日揮」赤字転落で社長が辞任、会長が社長を兼務
東証プライムでエンジニアリング大手の日揮ホールディングス(HD、横浜市)は、石塚忠社長COO(最高執行責任者)が3月31日付で辞任すると発表した。社長は、佐藤雅之会長CEO(最高経営責任者)が兼務する。
日揮HDはこの日、台湾やサウジアラビアなど海外の建設工事に遅れが生じて費用が拡大したことを受けて、業績予想を下方修正。2025年3月期は140億円の営業損失、40億円の当期損失と赤字転落する見通しだ。石塚氏はこの赤字転落の責任を取った格好。
このほか、社外取締役で元サウジアラビア大使の遠藤茂氏(1974年外務省入省)も6月27日の定時株主総会で退任する。理由は開示されていないが、遠藤氏は76歳で、13年から日揮HDの社外取締役を務めている。
加えて、社外取には元日銀理事の松島正之氏(79、68年入行)もいる。さらに執行に目を転じると、取締役兼常務執行役員の石川正樹氏は経済産業省・貿易経済協力局長の経験者(64、85年旧通商産業省入省)で、三井住友海上を経て21年に日揮HDに入社した経歴。
外務省、経産省、日銀と公的セクター出身者が重用されている印象があるが、取締役会として、海外リスクにどう立ち向かってきたのか。コーポレートガバナンスのあり方も含め、検証されるべきと言えそうだ。
【日揮ホールディングス】当社および子会社の代表取締役ならびに役員異動に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250210568935.pdf
通期業績予想の修正に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250210568938.pdf
「ミダックHD」廃棄物処理施設めぐる住民訴訟で自治体と勝訴
東証プライムで廃棄物処理のミダックホールディングス(HD、静岡・浜松市)は、浜松市による産廃廃棄物の処理施設の設置許可をめぐる訴訟で、東京高裁が浜松市と同社の主張を全面的に認め、控訴を棄却する判決を言い渡したことを明らかにした。
浜松市浜名区に計画された管理型の最終処分場「奥山の杜クリーンセンター」の設置許可をめぐり、同区の住民21人が浜松市を相手取り、許可の取り消しを求めて提訴していた。ミダックHDは、浜松市の要請に基づいて訴訟参加していた。一審の静岡地裁でも浜松市の主張が認められていた。
2020年8月24日付のミダックHDの開示資料によると、同社は10年の計画当初から、住民説明会を7回実施して処分場の安全性を周知・説明してきたという。
【ミダックホールディングス】施設設置許可処分取消訴訟(控訴審)の判決に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250210568928.pdf
「JDI」石川工場に生産集約で千葉・茂原工場を売却
東証プライムで中小型液晶パネルのジャパンディスプレイ(JDI)は、来年3月で千葉県の茂原工場での生産を終えると発表した。効率の良い石川工場(石川・川北町)に集約する。茂原工場は売却する方針。
茂原工場の従業員数は1323人(今年1月末日)といい、人員の今後については協業先と話し合っているという。生産終了で250億円の固定費の削減が見込まれるとしている。
また、JDIは取締役の月額報酬を30%、12カ月減額することを公表。さらに管理職が賞与の70%、一般職が賞与の50%減額することを労働組合に申し入れたことも明らかにした。
東芝やソニー、日立製作所の中小型液晶事業を統合して12年に発足したJDIだが、慢性的な赤字体質に苦しんでいる。
【ジャパンディスプレイ】茂原工場でのパネル生産終了及び同工場の AI データセンター化、 並びに石川工場への生産集約及び MULTI-FAB 化のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250115551110.pdf
役員報酬・賞与及び従業員賞与の減額のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250206565443.pdf
「ヤマハ発動機」取締役以外からも社長選出へ
東証プライムのヤマハ発動機は、取締役の人数を現在の15人以内から12人以内に減らすことを決めた。3月25日の定時株主総会で提案する。
また、取締役以外からも社長を選出できるように定款を変える。これまでは定款で「取締役会は、その決議によって取締役社長各1名を定める」としていたが、「取締役会は、その決議によって代表取締役を選定する」に変更するとしている。
ヤマハ発動機側は「最適な経営体制の機動的な構築を可能とするため」と説明しており、「社長=取締役」というコーポレートガバナンスの“当たり前”を再考する試みと言える。
【ヤマハ発動機 】定款一部変更に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250212569565.pdf
訪問看護「サンウェルズ」内部監査部門がヒアリング実施
東証プライム上場で訪問看護事業を営むサンウェルズ(石川・金沢市)は、不適切な診療報酬の請求が発覚したことを受け、再発防止策を発表(本誌既報)。
今回の再発防止策では、内部統制のあり方や、不適切なことが起きていないかをチェックする「訪問看護・介護事業リスク検討委員会」を設置するとしている。また、改ざんができない電子記録制度も導入する。
内部監査部門についても、これまでは書類の有無の確認を主な業務にしてきたが、今後は看護師らからのヒアリングも実施するという。
一方、関係者の処分も発表した。苗代亮達社長が報酬の6カ月間50%減額。長山知広専務と越野亨常務が2月13日付で取締役を辞任し、執行役員に降格するとしている。
【サンウェルズ】再発防止策の策定及び関係者の処分に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250212569434.pdf
取締役の辞任及び役付変更並びに執行役員の選任に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250212569407.pdf
(平日連載、2月12日公表分に続く)
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