【2025年2月17日「適時開示ピックアップ」】ツバキ・ナカシマ、力の源HD、富士ソフト、電気興業、ココペリ

2月17日月曜日の東京株式市場は小幅ながら反発した。日経平均株価は前日から24円値上がり、3万9174円で引けた。同日朝発表の2024年10〜12月期の国内総生産(GDP、速報値)が予想を上回り、日経平均は上昇したものの、円高ドル安が進行して値を下げる場面もあった。そんな17日の適時開示は262件。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。
「ツバキ・ナカシマ」検査不正に“性能や安全性に問題はない、は理由にならない”と特別委
東証プライムの精密部品メーカー、ツバキ・ナカシマ(大阪市)は、一部の製品で発覚した検査不正について特別調査委員会の報告書を公表した。
報告書によると、郡山工場(奈良・大和郡山市)で、ねじ状の機械部品の精度の測定値がJIS規格内の数値をはみ出た場合、数値を改ざんして規格内に収めていたという。パソコンの画面で測定数値を把握するが、1990年頃に修正するプログラムを作成し、長期間改ざんが行われていたという。
不正が行われた理由について、工作機械が古く、高い精度が出なかったことなどを挙げ、管理職らが現場の実情を踏まえた設備投資に取り組んでこなかった可能性も指摘した。
報告書が特に問題視したのは、同社では2018年に他のメーカーから仕入れた部材を自社工場で製造したものとして取引先に出荷するという偽装があったこと。この時、全社的に再発防止策がとられ、調査も行われたが、今回の不正に関わった担当者の一人は「コンプライアンス上問題であることは分かっていたが、 申告はしなかった」と回答したという。
不正を行った従業員は「製品の性能や安全性に問題がないと考えた」と弁解しているが、調査委は「他の多くの事案で製品の性能や安全性に問題がないと考え、不正に手を染めている」と指摘。さらに「検査結果を改ざんした以上、品質を保証したことにならない」「何の正当化にもならない」と厳しく非難し、内部通報制度の実効性の確保など改めて再発防止を求めた。
なお、調査委の委員長は畝本毅弁護士(大江橋法律事務所)が、委員は平尾覚 、八木浩史両弁護士(ともに西村あさひ法律事務所)が務めた。
【ツバキ・ナカシマ】(開示事項の経過)当社のリニア事業における一部製品の品質検査に関する不適切行為に関する調査報告書受領について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250217577791.pdf
ラーメン一風堂「力の源HD」違法な配当などで再発防止策
東証プライムで博多ラーメン「一風堂」チェーンを運営する力の源ホールディングス(HD、福岡市)は、分配可能額を超える金額で配当金を支払い、自己株式を取得したとして、再発防止策などを発表した。
原因について、第三者委員会は、担当者の理解不足で分配可能額の計算に誤解があったほか、これを防止する社内手続きがなかったことを指摘。再発防止策としては、マニュアルの作成のほか、会社法や金商品取引法の研修を実施することを求めた。
一方で、担当者に違法であるという認識はなく、民事責任の追及は見送る考えだ。
なお、第三者委の委員長は高杉信匡弁護士、委員は岩本文男、古田俊文両弁護士が務めた(いずれも弁護士法人淀屋橋・山上合同所属)。
【力の源ホールディングス】分配可能額を超えた当期の中間配当金と自己株式取得に関する第三者委員会の調査結果及び再発防止策について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250217577671.pdf
「富士ソフト」KKRvs.ベインの争奪戦が“KKR勝利”で決着
東証プライムの富士ソフト(横浜市)は、株式公開買い付け(TOB)の意向を示していた米投資ファンドのベインキャピタルが撤退することを明らかにした。半年間にわたって繰り広げられた富士ソフトの争奪戦は同じく米ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)に軍配が上がった。
今回のリリースによると、富士ソフトの創業者の野澤宏氏とベイン側が協議したうえで決まったという。富士ソフトは、ベインキャピタルのこれまでの行動について「(富士ソフトの)株主の皆様の利益に資するものであったと信じております」とコメントした。
今後、富士ソフトがKKRの傘下で成長できるかどうかが問われそうだ。
【富士ソフト】富士ソフト株式会社株式(証券コード:9749)に対する公開買付けの不実施に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250217577657.pdf
「電気興業」前社長のセクハラなどで株主代表訴訟
東証プライムで大型通信アンテナ製造の電気興業は、一人の株主が株主代表訴訟を起こしたことを明らかにした。
株主は、前代表取締役社長を相手取り、この前社長が行ったとされるセクハラに関する調査費用と、業務と関係のない交際費など合計2億3600万円余を電気興業側に支払うよう求めている。
同社自体は訴外だが、昨年12月、今回株主代表訴訟を起こした株主から提訴通知を受け取った電気興業の監査役は、セクハラ行為では和解しているなどの理由で前社長の提訴を見送ったが、その判断が正しかったかどうかも問われそうだ。
【電気興業】株主代表訴訟に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250217577525.pdf
DX支援「ココペリ」会計士協会が“爽監査法人”の登録拒否
東証グロースで中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援のココペリ(東京・紀尾井町)は、爽(そう)監査法人(東京・千代田区、業務執行社員=遠山景一、池田博行両公認会計士)が日本公認会計士協会から上場会社等監査人名簿への登録を拒否する旨(「登録の拒否」)の通知を受けたことを明らかにした。
理由として「(爽監査法人が)監査を的確に実施できる人的体制を整備していない」ことが挙げられているという。ココペリは後任の会計監査人を選定中という。
この登録制度は、上場企業を担当する監査法人に一定の水準を求めたもので、2023年4月か導入された。金融庁は昨年11月22日、爽監査法人に対し、品質管理の体制ができていないとして、業務改善命令を出していた。
【ココペリ】当社の会計監査人に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250214577035.pdf
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