【2024年10月29日「適時開示ピックアップ」】日本取引所グループ、リスクモンスター、豊田通商、出前館、東京一番フーズ他
10月29日火曜日の東京株式市場は続伸した。日経平均株価は前日から298円値上がりし、3万8903円で取引を終えた。米国株の値上がりを好感したようだ。また、自公政権の枠組みは維持される見通しで、影響は限定的と見られる。そんな29日の適時開示は329件で、この中からコーポレートガバナンスやリスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
社員のインサイダー疑惑で「JPX」が社外取の検証委を設置
東証プライム市場に上場する日本取引所グループ(JPX)は、傘下にある東京証券取引所社員のインサイダー疑惑について、調査検証委員会を設けることを公表した。JPXの独立社外取締役4人が委員となる。委員長はJPX指名委員会委員の竹野康造弁護士で、委員にはIHI元会長の釡和明氏、公認会計士の住田清芽氏、元警察庁長官の松本光弘が就任。現在、証券取引等監視委員会による調査が続いており、「調査に影響を及ぼすことがないように進めるため、現時点で(調査検証委員会による)調査の完了時期は未定」としている。
【日本取引所グループ】独立社外取締役による調査検証委員会の設置について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241028504106.pdf
「リスクモンスター」12億円訴訟で東京商工リサーチが附帯控訴
東証スタンダード上場で信用サービスを提供するリスクモンスターは、東京商工リサーチが東京高裁に附帯控訴したと発表した。両社は以前、提携関係にあり、リスクモンスターが東京商工リサーチのデータベースを使っていた。だが、2022年春に提携が解消され、東京商工リサーチが提供していた企業情報の消去と損害賠償を求めて提訴。東京地裁はさる9月2日、リスクモンスター側に約12億円の支払いを命じた。リスクモンスターは控訴し、今回、東京商工リサーチも附帯控訴で応じた形だ。
【リスクモンスター】当社に対する附帯控訴状の受領に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241029505286.pdf
「豊田通商」がエレマテックを完全子会社化のTOB
東証プライム上場の豊田通商は、58.63%の株式を持つ子会社のエレマテックを完全子会社化すると発表した。株式公開買い付け(TOB)を10月30日から始める。買い付け価格は1株2400円。ちなみに、29日の終値は1705円だった。エレマテックは、電子材料などのエレクトロニクス分野を得意とする商社で東証プライムに上場している。豊田通商は、グループとして意思決定を機動的かつ柔軟にして、AI(人工知能)などグローバルな需要に対応していくという。エレマテックの経営陣もTOBに賛同している。
【豊田通商】エレマテック株式会社株式(証券コード:2715)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241028503641.pdf
「出前館」がEY新日本からトーマツに監査人交代
東証スタンダード上場でデリバリーサービスの出前館が公認会計士の異動を発表した。2024年11月26日付で、EY新日本有限責任監査法人から有限責任監査法人トーマツに変更する。出前館は「継続監査年数を踏まえ、複数の監査法人を対象として検討してきた」と説明している。出前館の有価証券報告書によると、EY新日本有限責任監査法人の継続間機関は18年間。
【出前館】公認会計士等の異動に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241028504220.pdf
とらふぐ亭「東京一番フーズ」契約更新の辞退で監査人を交代
東証スタンダード上場で、フグ料理店「とらふぐ亭」を展開する東京一番フーズが会計監査人の交代を発表した。変更は株主総会のある2024年12月24日の予定で、赤坂有限責任監査法人から南青山監査法人になる。赤坂監査法人側から「人員面を考慮すると十分な監査時間の確保が困難である」として契約更新の辞退の申し入れがあったという。
【東京一番フーズ】会計監査人の異動に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241029505147.pdf
「コマツ」が米国基準からIFRSを任意適用へ
東証プライム上場で建設機械大手コマツは、国際財務報告基準(IFRS)を任意適用すると発表した。2029年3月期決算からIFRSで開示する予定だ。現在、コマツは現在、米国基準を採用しているが、IFRSの適用について「財務情報の国際的な比較を目的として」と説明している。
【コマツ】国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241029504825.pdf
「NEC」が子会社TOBでネットインフラ事業を強化
東証プライム上場のNECは、38.47%の株式を持つ連結子会社のNECネッツエスアイに対して株式公開買い付け(TOB)を実施して全株式を買い取り、非上場化すると発表した。ネッツエスアイ側も賛同している。プライム上場のネッツエスアイはネットインフラ事業に強く、企業や官庁など幅広い顧客を持つ。NECは連携を強化して、持続的な成長を図るとしている。買い付け代金は2354億円を見込む。
【NEC】NECネッツエスアイ株式会社株式(証券コード 1973)に対する 公開買付けの開始に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241028504347.pdf
「レオパレス21」株主代表訴訟で訴えられた役員側に補助参加
東証プライム上場でマンション管理のレオパレス21は、同社の役員らが提訴された株主代表訴訟で、訴えられた取締役ら側に補助参加すると発表した。訴えられたのは取締役と元取締役23人、監査役と元監査役5人で、原告の個人株主側はレオパレスに対して約35億円の賠償責任の支払いを求めている。この訴訟の背景には、家具と家電の処理手続き費用に関するトラブルが背景にあるようだ。
【レオパレス2 1】株主代表訴訟への補助参加に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241029504862.pdf
「DTS」海外子会社不適切会計で役員等を処分
東証プライム上場で企業のデジタル化を支援するDTSは、海外の子会社で顧客などに不適切な支払いがあったことを受け、役員の処分などを発表した。11月1日付で取締役の竹内実専務執行役員を無冠の取締役にする。また北村友朗社長は2カ月間、報酬10%分を自主返納する。
この不正取引を調べた特別調査委員会の報告書(今年8月6日公表、委員長=三宅英貴弁護士)によると、遅くとも2011年以降、現地の顧客である銀行幹部に不適切な資金が手渡されたり、虚偽の経費精算が行われて旅費として処理されたりするケースもあったという。なお、当該国などについては情報開示されていない。
【DTS】役員の処分および役員報酬の自主返納に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241029505003.pdf
「大東建託」親子上場の懸念等から子会社ハウスコムを上場廃止
東証プライム上場で賃貸事業の大東建託は、株式交換で子会社のハウスコムを完全子会社化すると発表した。賃貸物件の仲介などを営んでいるハウスコムは東証スタンダードに上場しているが、来年1月下旬に上場廃止になる見通し。連携強化などを目的としている。このほか、親子上場のガバナンスをめぐっては、親会社が強制的に子会社の利益を付け替える可能性も指摘され、機関投資家から批判も出ている。大東建託は、これらの上場子会社のガバナンスについても検討したと説明している。
【大東建託】大東建託株式会社によるハウスコム株式会社の 完全子会社化に関する株式交換契約締結(簡易株式交換)のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241029504888.pdf
(平日連載、2024年10月30日公表分に続く)
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