【2024年11月28日「適時開示ピックアップ」】LIFULL、グッドパッチ、TBS、ユニチカ、イトーキ、ジェイフロンティア
11月28日木曜日の東京株式市場は反発した。日経平均株価の終値は前日比214円高い3万8349円だった。やや円安に動いたことなどで買いが先行した。そんな28日の適時開示は177件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
不動産情報サイト運営の「LIFULL」のれん減損が拡大
東証プライムで不動産・住宅情報サイトの「ホームズ」を運営するLIFULL(ライフル)は、11月13日に公表した2024年9月期決算(国際会計基準)について、のれんの減損損失を訂正した。
同社のリリースによると、複数の企業が提供する情報をひとつのウェッブにまとめる「アグリゲーション」と呼ばれるサービスが振るわず、この傾向は今後も続く見通しで、これに関する減損損失が38億円から70億円になったという。
これによって当期損益も52億円の赤字から84億円の赤字となった。
【LIFULL】(訂正)「減損損失の計上及び通期連結業績予想と 実績値との差異に関するお知らせ」の一部訂正について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241121527634.pdf
「グッドパッチ」チェック体制強化で“内部統制有効”に転換と報告
東証グロース上場で、デザインの考え方から企業を支援するグッドパッチ(東京・渋谷区)は、財務報告に係る内部統制が有効であると発表した。
2023年8月期は、子会社で過大な資産計上が発覚して、「開示すべき重要な不備」があるとしていたが、人材の適切な配置やチェック体制を強化した結果、24年8月期は「開示すべき重要な不備」は是正されたという。
グッドパッチの内部統制、コーポレートガバナンスが実際に健全化しているのかがこれから問われる。
【グッドパッチ】財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備の解消に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241128531155.pdf
「TBS」従業員6640人への“株式譲渡”の発表を撤回
東証プライムのTBSホールディングス(HD)は、11月8日に公表した「従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブとしての自己株式の処分」を撤回した。適用対象の人数を一部誤って算出し、譲渡する株式数や総額なども間違ったという。
11月8日のリリースでは、従業員(子会社も含む)6640人を対象に1人当たり株式100株を付与すると説明し、総額は24億8400万円と公表していた。TBS側は詳細な説明はしていない。後日、この自己株式の処分について、改めて公表するとしている。
この数年、上場企業では、役員だけでなく、従業員にも株式を譲渡する動きが急速に広がっている。ただ、法整備が遅れ、各企業が工夫しながら制度設計をしている。
それにしても、公共の電波を利用し、ましてや報道機関を自任するメディア企業が詳細な説明をしないことに問題はないのか。放送局のコーポレートガバナンスには要注目と言える。
【TBSHD】(開示事項の中止)「従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブとしての 自己株式の処分」の中止に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241128531207.pdf
「ユニチカ」に官民ファンドが350億円の支援へ
東証プライムで繊維メーカー大手のユニチカは11月28日、官民ファンドの「地域経済活性化支援機構(REVIC)に対して再生支援を申し込み、同日、支援が決まったと発表した。
同支援機構から増資や融資などで350億円の支援を受ける。また、ユニチカは金融機関に対して430億円の債権放棄を要請したほか、メインバンクの三菱UFJ銀行が90億円の融資枠を設定した。
ユニチカは明治22(1889)年に「尼崎紡績」として創業。繊維で一時代を築いたが、海外勢に押され、最近は食品包装フィルムなどの化学の高分子事業などに転換することで生き残りを図ったが、こちらもアジア諸国との競争が厳しさを増していた。
さらに近年は原材料も値上がりし、収益力を回復できない状態が続いていた。結果、積み上がった有利子負債921億円(2024年3月期)も、売上高の1183億円(同)に比べて大きく、財務基盤の強化に向けてREVICの支援を受けることにした。
創業から続く繊維事業は構造改革の対象事業と位置づけられ、事実上、撤退する見通しだ。上埜修司社長ら社内出身の取締役は全員辞任するとしている。
【ユニチカ】株式会社地域経済活性化支援機構による再生支援決定、第三者割当による C 種種類株式の発行、定款の一部変更、自己株式の取得及び自己株式の消 却、資本金及び資本準備金の額の減少、並びに親会社及び主要株主である 筆頭株主異動等に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241128531064.pdf
運送業者にタダ働きさせた「イトーキ」公取委が行政指導
東証プライムでオフィス家具のイトーキは、公正取引委員会から警告の行政指導を受けたと発表した。配送を委託した運送事業者に無償で仕事をさせていたと見られ、独占禁止法違反の疑いが出ている。
イトーキは「今回の行政指導を極めて重く受けとめており、取引適正化に向けた取り組みに全社をあげて推進したい」とコメントし、過去の労働に対する対価相当分を支払ったり、今後の運賃体系の見直しをはかったりしているという。
運送業界の人手不足は深刻で、公取委はこの観点からも動いた格好だが、下請けイジメに手を染める企業はコーポレートガバナンス以前に、コンプライアンス体制の整備が急務だと言える。
【イトーキ】公正取引委員会からの行政指導(警告)についてhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241128530945.pdf
「ジェイフロンティア」有価証券報告書提出できず上場廃止迫る
東証グロース上場で医薬品や健康食品の通販を手がけるジェイフロンティア(東京・渋谷区)は、2024年5月期の有価証券報告書について、提出期限の11月29日まで提出できない見通しになったと発表した。
有報の提出は通常3カ月以内だが、ジェイフロンティアでは不適切な広告取引の疑惑が浮上し、今年7月に特別調査委員会を設置。11月13日になって報告書がまとまり、役員らが仕入れ先と組んで売り上げの水増しをしていたことなどが指摘された。
報告書の提出が遅れ、監査法人の手続きが終わっていないという。このため、11月28日付で同日東証の監理銘柄(確認中)に指定され、8営業日以内(12月11日まで)に提出できなければ上場廃止になる見込み。
ジェイフロンティアは「可能な限り早い時点での有価証券報告書の提出・開示に努めてまいる」とコメントしている。なお、23年5月末時点の総株主数は法人、個人合わせて1918。さらに同時点で、中村篤弘社長個人が発行済み株式の50.49%を保有する筆頭株主となっている。
コーポレートガバナンスの危機が迫る。
【ジェイフロンティア】2024 年5月期有価証券報告書提出遅延及び 当社株式の監理銘柄(確認中)の指定の見込みに関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241127530451.pdf
(平日連載、2024年11月29日公表分に続く)
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