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【2024年12月2日「適時開示ピックアップ」】シンワワイズ、フィスコ、クシム、小林製薬、象印、イメージワン、JSB

師走に入って最初の取引日となった12月2日月曜日の東京株式市場は反発した。日経平均株価は前週末から304円値上がりして3万8513円になった。午前中は前日の株価を割り込むことが多かったが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による運用利回りの引き上げが報じられことがきっかけに午後は上昇に転じたという。そんな2日の適時開示は379件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。

「シンワワイズHD」ガバナンス委員が辞任で迷走

本誌11月23日付記事でも既報の東証スタンダード上場で美術品取引サービス、Shinwa Wise Holdings(シンワワイズホールディングス=HD)は、ガバナンス委員会の渡部秀敏委員(元ワタベウェディング社長・会長、理想科学工業社外取締役)が12月2日付で辞任したと発表した。理由は「本人から辞任の申出があったため」としている。

シンワワイズでは、子会社で不適正な会計処理が発覚し、11月5日に2019年5月期~22年5月期の有価証券報告書を訂正した。

再発防止を目的に内部統制システムを整備などに当たるガバナンス委員会は、設置した今年9月18日当初は社外取締役の山本晋平、長田忠千代の両氏と社外監査役の木内孝胤氏に加え、今回辞任した渡部氏、仁平信哉弁護士(仁平総合法律事務所)、岩崎章浩弁護士(法律事務所HEROリーガルグループ 代表)の6名だった。

しかし、1週間で岩崎弁護士が辞任、11月26日にはKIC取締役で公認会計士の伊藤俊哉氏と須田美鈴弁護士(飯沼総合法律事務所)が就任、そして渡部氏の辞任と、入れ替えが目立っている。シンワワイズのコーポレートガバナンスは大丈夫なのか。

【Shinwa Wise Holdings】ガバナンス委員会委員辞任のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241202533150.pdf

「フィスコ」経営統合検討の「クシム」取締役の辞任勧告で波紋

東証グロース市場で金融情報配信会社のフィスコは、東証スタンダード上場でブロックチェーン技術を活用した暗号資産事業を展開するクシムとの経営統合の検討を中止したと発表した。その理由として、クシムが11月25日に辞任勧告した取締役の田原弘貴氏によるインターネット上の投稿を挙げている。

本誌でも既報したが、クシムの25日のリリースによると、田原氏は株主に対して重要な情報を漏洩させた疑いがあるという。暗号資産に関連する事業に関連し、マネーロンダリング(資金洗浄)の懸念が伴う提案もあり、クシムは「国家の経済安全保障上のリスクにもつながり得るものと考えております」と指摘していた。

一方の田原氏は11月30日に「クシムのガバナンスを改革し、成長企業へ!」とのサイトを立ち上げ、フィスコとクシムの株式交換(経営統合)を問題視しているほか、「クシムの中に多額の使途不明金がある」などと訴えている。

金融情報、そしてコーポレートガバナンスに関する情報を扱うフィスコのリスクマネジメント力が試されていると言えそうだ。

【フィスコ】株式会社クシム取締役のインターネット上の投稿に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241202533073.pdf

“物言う株主”オアシス「小林製薬」に臨時総会要求、牛島信弁護士も登場

東証プライムの小林製薬は、香港の投資ファンドのオアシス・マネジメントから臨時株主総会の開催を要求されたと発表した。

アクティビスト(物言う株主)として勇名を馳せるオアシスは、紅麹を含んだサプリメントの問題について、調査や検証、原因究明が不十分で、事実検証委員会が独立性や客観性に欠けていると訴え、創業家の小林一雅特別顧問(前会長)が今も会長室を使っていることを指摘している。

そのうえでオアシスは現経営陣について、「創業家依存からの脱却を進める意思があるのか疑わしい」として、社外取締役の3人の追加を求めている。3人は、元検事の中村芳生弁護士、藤井郁也法律事務所の元アソシエイト弁護士で製造物責任に詳しいリチャード・ドルス・ヤング氏、医師のトモコ・チュウバチ氏。

さらに注目されるのは、オアシスが、会社法316条で定められ、株主総会の時に提出された資料や、会社の業務や財産を調べることができる「調査者」に牛島信弁護士の選任を求めたことだ。牛島信氏は、日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)の理事長を務めるなどガバナンスの論客として知られ、企業小説家としての顔を持つ大物弁護士だ。

小林製薬は「本請求の内容を慎重に検討の上、決定次 第開示いたします」とのコメントを出している。同社の問題は、オアシスが得意とするガバナンスをめぐる争いに発展しようとしている。

【小林製薬】株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241202532815.pdf

「象印マホービン」買収防衛策を廃止へ

東証プライムの象印マホービンは、買収防衛策を取りやめることを公表した。買収防衛策は、20%以上を買い求める者が表れた場合、買収者に情報提供を求めるなど必要な手続きを定め、取締役会が認め場合にのみ株式を大量に買うことができるという制度。2025年2月19日の定時株主総会で継続しないことを決めた。

ただ、象印マホービンは、株主の利益を損なうおそれのある買収が起きた場合、「一般株主が判断できるような十分な時間と情報の提供を求め、社外取締役の意見を尊重した上で、採用可能かつ適切と考えられるあらゆる施策を講じます」とコメントしている。

一般的に、買収防衛策は株価の下げ要因とも言われ、経営者の保身を訝る向きもある。

【象印マホービン】当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の非継続に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241129532268.pdf

「イメージワン」監査等委員の取締役が辞任

東証スタンダード上場で医療・衛星画像の処理を提供するイメージワンは、監査等委員でもある川眞田啓介取締役が任期途中の12月24日で辞任すると発表した。「一身上の都合による」としている。

川眞田氏は公認会計士で2023年12月から取締役(監査等委員)を務めていた。

本誌既報の通り、イメージワンは昨年、不正な金品供与や空気清浄器の買い取りの偽装などの疑惑が相次いで発覚。第三者委員会が「本蓄電池取引の実在性は認められない」などとする報告書を出していた。

役員の辞任は不可抗力ながら、同社のリスクマネジメント、そしてコーポレートガバナンスに不安が燻っているようだ。

【イメージワン】監査等委員である取締役の辞任に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241202532469.pdf

京都・不動産「JSB」脱税容疑で逮捕の社外取締役弁護士が辞任

東証プライム上場で学生賃貸マンションや高齢者住宅の運営・管理を行うジェイ・エス・ビー(JSB、京都市)は、社外取締役の鈴木康之氏が辞任したことを明らかにした。「一身上の理由」としている。マスコミの報道によると、鈴木氏が取締役を務める弁護士法人が脱税した疑いが強まり、東京地検特捜部が鈴木氏は逮捕した(本誌既報)。

この弁護士法人の鈴木康之法律事務所はホームページで、鈴木氏が代表取締役弁護士を11月18日に辞任したことを説明し、「新事務所名と代表者の変更手続き中」と記している。

法人税法違反の容疑で、東京地検特捜部に逮捕されことも認め、「お取引先企業の皆様や、お客様、ご関係者の皆様には、多大なご迷惑及びご心配をおかけしております。法律事務所としてこのような事態に至った事を深くお詫び申し上げます」と陳謝した。

「事件に関係の無い弁護士への代表変更を行い、管理体制の改善に努め、組織一丸となってこれまで以上のリーガルサービスを提供していく事で、信頼回復に取り組んでまいります」と再起を誓っている。

なお、辞任年月日は〈2024年11月15日〉となっているが、発表は昨日12月2日……このタイムラグはどういうことなのだろうか。ともかくも、弁護士は社外取締役・監査役で引っ張りだこだが、バックグラウンドまでを含めた人選は難しいということか。

【ジェイ・エス・ビー】社外取締役の辞任に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241202532601.pdf

(平日連載、2024年12月3日公表分に続く)

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