社外取締役の発言で「内部通報」態勢が前進するケースも
公益通報窓口の担当者レベルの意識が高まっている企業は、実際は指揮命令系統として経営陣から何らかの指示があるケースがほとんどだ。ボトムアップで内部通報制度を入れるケースはまずありえない。そして、公益通報窓口など体制整備の指示の発端は、とりわけ社外取締役というパターンが結構多いのだという。上場企業の経営企画担当者が語る。
「内部通報窓口に関して“気づき”を与えてくれるのが、社外取締役であるというのは、特にコーポレートガバナンス・コードで社外取の選任を求められている上場企業では、往々にしてあるケースのようです。弊社の場合でも同様で、ある社外取の方から『A社では1年間で200件近くの相談があるのに、ここではなぜ30件なのか?』などと取締役会で問題提起され、コンプライアンス部門が中心となって内部通報窓口の在り方を再検証したことがあります。特に、複数の社外取締役を兼任する方であれば、他社の事情にも精通していますから、その発言は重い。良い意味で、社外取が機能しているケースと言えるかもしれません」
確かに、経営陣に何らかの不正の疑いがあった場合、プロパーの社内取締役だと立場上なかなか動きにくい面があるのは事実。むしろ、どちらかというと、不正の発覚を隠そうという心理が働く場合もあるだろうが、外部の社外取締役はしがらみが少ないだけに、内部通報制度の体制整備に積極的に発言できるのかもしれない。
ちなみに、社外取締役に対しては企業現場からこんな悲鳴も上がっているという。
「社外取締役の会社法上の任期は1年。要するに、取締役会で何も発言しないと、今は1年で切られてしまう時代になっている。やはり、大企業の取締役は非常に魅力がありますから、“何でもかんでも”というと語弊があるかもしれませんが、とにかく積極的に発言する傾向が強まっているようです。だから、『こんな施策をやるべきだ』とか、取締役会で熱心に提言する。そうなると、会社の取締役会担当者をはじめ、人事・総務、そして秘書などの社員は、物凄く大変だと嘆いていました。社外取締役の意見を発端に、そのテーマに対応するために長い時間がかかる。この会社でこの実態はどうなっているかを仮に調査をすると、何十時間とかかるわけです。次の取締役会までに調べて報告しないといけない。現場社員に物凄い負担になっているようです」(大手企業で社外取締役を務めたことがある法曹関係者)
これまで社外取締役というと「名ばかり社外取締役」という言葉もあるくらい、取締役会で何も発言せず、ただの“お飾り”が多いと言われてきた。コーポレートガバナンス・コードの適用が始まり、社外取締役の役割が注目された2015年以降、各企業で指摘されたそんな名ばかり社外取が大量発生しているかと思いきや、そうした傾向は一昔前の話のようだ。
「言うだけ社外取締役」が危惧される面もあるが、こと内部通報に関しては、社外取の発言が契機となっていることは、評価すべき“社外取の福音”と言えるだろう。