【オリエンタルランド秘史#16】日米で“物言う株主”が攻撃する「ディズニー銘柄」
アクティビストに狙われる京成電鉄が自社株買いを実施
(#15から続く)京成電鉄、三井不動産といったオリエンタルランドと関係の深い企業が立て続けにアクティビスト(物言う株主)のアタックを受けている。オリエンタルランド関連で標的になっているのは日本企業だけではない。2076年まで東京ディズニーリゾート(TDR)のライセンス契約を結ぶウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)もアクティビストからの攻撃に苦慮している。
米著名投資家のネルソン・ペルツが率いる投資ファンドのトライアン・パートナーズがDISに最初にプロキシーファイト(委任状争奪戦)を挑んだのは昨年1月のことだった。これはまもなく取り下げられたが、昨年末からトライアンは再び攻勢を強めている。今年4月3日に予定されている株主総会に向け、ペルツを含む取締役の選出案を発表。DISはトライアンの提案を一切認めず、すでにリストアップしている候補者で押し通す構えだ。
このファイトを複雑にしているのはDISに株主提案しているアクティビストが1社だけではない点だ。トライアン以外にもブラックウェルズ・キャピタルやバリューアクト・キャピタルら有力な米投資ファンドが参入。ブラックウェルズが不動産事業の分離を求めるなど対決姿勢を見せているのに対し、バリューアクトはDISと情報の秘密保持契約を結び共同戦線を張っている。
アクティビストたちの格好のターゲットになっているのはDISの株価が低迷しているからだ。2023年10~12月期の純利益は前年同期から約5割も増えているのに、株価向上には期待したほど寄与しなかった。
もうひとつの背景はやはり、DISが世界でも有数のブランドであるディズニーを持っている点だろう。こうした企業にアクティビストが介入すれば、市場は敏感に反応する。欧米よりも株主提案の制限が緩いといわれる日本ではなおさらだ。英ファンドのパリサー・キャピタルから株主提案を受けている京成電鉄、米ファンドのエリオット・マネジメントからターゲットにされている三井不動産。いずれもその発覚直後から株価は急騰した。
パリサーから保有するオリエンタルランド株(持株比率22.15%)を15%未満まで減らすように求められている京成電鉄は2月22日、330億円を上限とする自社株買いを発表。京成電鉄側は「ファンドからの要請の影響はない」としている。確かに自社株買いはパリサーの要求項目には挙げられていなかったものの、額面通りには受け取り難い。彼らアクティビストの動きを無視できなくなり、重い腰を上げたというのが真相だろう。国内外から「ディズニー関連銘柄」として注視される京成電鉄や三井不動産が今後もアクティビストたちに狙われるのは必至。目が離せない状況になっている。
片や、TDRを運営する当のオリエンタルランドは時価総額で京成電鉄は元より、三井不動産を大きく上回り、アクティビストの攻勢に晒されていない。しかし45年前、資金手当てで行き詰まりを見せていた――。
このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
ご登録済みの方は、こちらからログインして下さい
まだGovernance Q会員(無料)に登録されていない方はこちら
会員限定記事が読み放題!
会員(無料)に登録関連記事
ピックアップ
- 【2024年11月20日「適時開示ピックアップ」】ストレージ王、日本製麻、コロプラ、GFA、KADO…
11月20日の東京株式市場は反落した。日経平均株価は売り買いが交錯し、前日から62円下落した3万8352円で引けた。そんな20日の適時開示は…
- 安藤百福「素人だから飛躍できる」の巻【こんなとこにもガバナンス!#36】…
栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「素人だから飛躍できる」安藤百福(あんどう・ももふく、実業家) …
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#2】米エヌビディア、豪レゾリュート・マイニング、加バリック・ゴ…
組閣人事報道も相次ぎ、世界がトランプ米大統領の再来前夜に揺れ動く中、世界では、どんなコーポレートガバナンスやサステナビリティ、リスクマネジメ…
- 鳥の目・虫の目・魚の目から見る「公益通者保護法」の再改正【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#5】…
遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) 内部通報者への「不利益処分に刑事罰」構想の実効性は? 公益通報者に対して公益通報者保護法が禁止する…
- 【米国「フロードスター」列伝#1】「カリブ海豪華フェス」不正実行者の所業と弁明…
さる2024年9月、テレビ朝日系バラエティー番組『しくじり先生 俺みたいになるな‼』に、見慣れぬアメリカ人が登場した。その名は、ビリー・マク…
- 「日本ガバナンス研究学会」企業献金から大学・兵庫県知事問題までを徹底討論《年次大会記後編》…
(前編からつづく)ガバナンス弁護士の泰斗として知られる久保利英明氏が会長を務める日本ガバナンス研究学会。その年次大会が10月5日、大阪・茨木…