【オリエンタルランド秘史#4】ファンドが狙う「京成電鉄」OLC筆頭株主の源流
“物言う株主”が噛みついた「資本のねじれ」
(#3から続く)10月30日、東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドは2024年3月期の営業利益が従来予想を245億円上回り、過去最高の1467億円(前期比32%増)になる見込みだと発表した。インバウンドが想定以上の伸びを示し、まさに絶好調というほかないが、一方で気になるニュースも流れている。オリエンタルランド株22.15%を持つ筆頭株主の京成電鉄に対し、英投資ファンドのパリサー・キャピタルが同株の一部売却を求めているというもの。パリサーは京成電鉄株を1.6%保有している。
最初に報じたのはロイター通信。10月17日、パリサー創業者のジェームズ・スミスがニューヨーク市で開かれた投資家イベントで講演。京成電鉄の企業価値が本来よりも43%も格安状態にあるとして、オリエンタルランド株の保有比率を引き下げるべきだと提案したという。日本経済新聞が続いて取り上げると、18日の東京株式市場で京成電鉄の株価は一時、前日から8%急騰した。
ジェームズ・スミスは企業に強硬姿勢で臨むことで知られるアクティビスト(物言う株主)の米エリオット・マネジメントの出身。京成電鉄は思わぬ脅威に晒されることになったわけだが、そもそも同社のオリエンタルランド株については問題点を指摘する声がだいぶ前から出ていた。
保有する株価総額は約2兆円で、京成電鉄の時価総額約1兆円の実に2倍。単純に言えば、京成電鉄を丸ごと買って、手持ちのオリエンタルランド株を半分売れば、買収資金が回収できてしまうことになる。しかも、京成電鉄とオリエンタルランドのシナジー(相乗効果)も薄い。TDRはJR東日本が運行する京葉線舞浜駅の駅前にある。一方、京成電鉄の沿線からはだいぶ離れていて、その効果を活かしきる環境にないのだ。
資本のねじれをいかに解消するかは京成電鉄経営陣の長年の課題だったが、これまで手つかずのまま来た。今回はその間隙を突かれた格好だ。もし、パリサーからの攻撃を乗り切れたとしても、別のアクティビストから第二、第三の矢が飛んでくるのは必至。にもかかわらず、経営陣が動こうとしないのはなぜなのか。10月31日の上半期決算会見で、京成電鉄はオリエンタルランド株の保有を続けることを表明している。
オリエンタルランドの創業メンバーとして、そして筆頭株主として、世界に誇るテーマパークを誕生させ牽引してきたのは京成電鉄だという思いから、経営陣たちはなかなか抜け出せないのではないか。その背景を紐解くには60数年前に遡らなければならない――。
このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
ご登録済みの方は、こちらからログインして下さい
まだGovernance Q会員(無料)に登録されていない方はこちら
会員限定記事が読み放題!
会員(無料)に登録関連記事
ピックアップ
- 【2024年11月20日「適時開示ピックアップ」】ストレージ王、日本製麻、コロプラ、GFA、KADO…
11月20日の東京株式市場は反落した。日経平均株価は売り買いが交錯し、前日から62円下落した3万8352円で引けた。そんな20日の適時開示は…
- 安藤百福「素人だから飛躍できる」の巻【こんなとこにもガバナンス!#36】…
栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「素人だから飛躍できる」安藤百福(あんどう・ももふく、実業家) …
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#2】米エヌビディア、豪レゾリュート・マイニング、加バリック・ゴ…
組閣人事報道も相次ぎ、世界がトランプ米大統領の再来前夜に揺れ動く中、世界では、どんなコーポレートガバナンスやサステナビリティ、リスクマネジメ…
- 鳥の目・虫の目・魚の目から見る「公益通者保護法」の再改正【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#5】…
遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) 内部通報者への「不利益処分に刑事罰」構想の実効性は? 公益通報者に対して公益通報者保護法が禁止する…
- 【米国「フロードスター」列伝#1】「カリブ海豪華フェス」不正実行者の所業と弁明…
さる2024年9月、テレビ朝日系バラエティー番組『しくじり先生 俺みたいになるな‼』に、見慣れぬアメリカ人が登場した。その名は、ビリー・マク…
- 「日本ガバナンス研究学会」企業献金から大学・兵庫県知事問題までを徹底討論《年次大会記後編》…
(前編からつづく)ガバナンス弁護士の泰斗として知られる久保利英明氏が会長を務める日本ガバナンス研究学会。その年次大会が10月5日、大阪・茨木…