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【ビッグモーター×損保の核心#4】損保ジャパン元役員が検証する「車両紹介」の罠

今月11月末に保険代理店登録が取り消される見通しとなった中古車販売店大手、ビッグモーター。一方、不正を知りながら、同社との取引を継続した損害保険ジャパンをめぐっては、金融庁が親会社のSOMPOホールディングスに立ち入り検査を実施。子会社の監督責任が問われるのは必至の情勢だ。#1#2#3の第1部に引き続き、第2部では、損保ジャパンでリスク管理担当役員などを務めた井上泉・ジャパンリスクソリューション社長が、両社の関係の核心を詳細に検証する――。

第1部に引き続き、第2部では、ビッグモーターと密接な取引関係を持っていた損害保険会社の動向を扱います。とりわけ問題視されているのは、ビッグモーターの不正を知り、一旦は主要取引損保3社が要修理車両の紹介を中止していたが、すぐに損保ジャパンだけが紹介を再開したことにほかなりません。

筆者は損保ジャパンの取締役常務執行役員として、同社のコンプアライアンス、リスク管理、人事部、総務部等を担当していた時期があります。退任してすでに18年。その間、損保ジャパンの業態も大きく変わり、現在の経営陣はみな、私が一緒に仕事をした人たちではありません。しかし、後輩たちが今日のような困難な状況にはまり込んだことについては心が痛みます。損保ジャパンの中で一体何が起こったのかについて、“身内弁護”に陥ることなく、客観的に事実関係を解きほぐし、本問題から得られる教訓を引き出していきたいと考えています。それが先輩から後輩へのアドバイスであるとともに、すべての企業や組織体が不祥事やリスク管理を考究する時の参考になるだろうという思いがあります。

金融庁による報告徴求命令と立入検査

今年7月31日、金融庁はビッグモーターと代理店契約を結んでいた損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上他4社に対し、保険業法に基づく「報告徴求命令」を発出しました。

報告徴求命令とは、金融庁が金融機関に対し、不適切な取引や債務超過といった経営上の重大問題に関し、事実関係や財務状況などの報告を法律にもとづいて要求することです。命じられた会社は、必要に応じて関連資料の提出をしなければなりません。虚偽の報告をしたり資料の提出を拒んだりすれば、懲役や罰金を科されるという大変位置付けの重い措置です。

鈴木俊一金融担当大臣は、8月1日の記者会見で、報告徴求命令の目的を説明した後、特に損保ジャパンに対しては格別の関心を示し、ビッグモーターへの出向者に係る事実関係、1社だけ顧客紹介を再開した際の経緯等も調査すると述べました。そして、金融庁は9月19日、損保ジャパンとビッグモーターに立ち入り検査を開始、現在も続いています。

保険代理店と整備工場――ビッグモーターの“2つの顔”

ビッグモーターには2つの顔がありました。ひとつは損保会社を代理して保険契約を募集する代理店として、もうひとつは保険契約の対象となっている自動車が事故で損傷した時にそれを修理する整備工場としての顔です。第1部では、「整備工場としてのビッグモーター」の問題行為を分析しました。第2部のテーマは、損保会社が「代理店としてのビッグモーター」および「整備工場としてのビッグモーター」とどのような関係にあり、どのように接していたか――になります。

代理店としてのビッグモーター

損保ジャパンの前身、安田火災海上保険とビッグモーターとの取引は1988年7月から始まりました。ビッグモーターはその後、他の損保会社とも代理店契約を結び、事件直前では計7社の代理店となっています。

2022年度のビッグモーターの取扱保険料(主として自賠責保険と任意自動車保険)は約200億円であり、うち損保ジャパンの保険料は120億円(シェア60.5%)と大きな地位を占めていました。残り80億円を他の6社が分け合っていたことになります。実は、金融庁が指摘する「損保ジャパン1社だけ顧客紹介を再開した経緯」も、他損保会社をはるかに凌ぐ収入保険料の大きさが密接に関わっていたのです。

ビッグモーター「本業支援」がシェアの決め手 損…
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