エジソン「私自身も多くのモノを盗みながら生きてきた」の巻【こんなとこにもガバナンス!#39】

栗下直也:コラムニスト
「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ)

「産業と商業では人のモノを盗むというのが相場だ。私自身も多くのモノを盗みながら生きてきた」
トーマス・エジソン(米国の発明家)

1847~1931年。少年時代に鉄道の新聞売子をつとめる傍ら、電信技術を習得して電信技手になる。1870年に発明家として独立。株式相場表示機、電信機、送話器、蓄音機、白熱電球、映画用撮影機、映写機、蓄電池などを次々に発明した。生涯の特許数は1300を超える。

発明は真似から始まる

子どもの頃、エジソンを「努力の人」として教えられた人も多いだろう。

実際、彼は「天才は1パーセントの才能と99パーセントの努力によって創られる」「わたしは決して、失望などしない。どんな失敗も、新たな一歩となるからだ」「私が成功することができたのは、仕事場に時計がなかったおかげである」と、いかにもひた向きに頑張る重要性を説いた言葉を残している。

一方、「エジソンは発明王なんかではない。電球も発明していなかった」という声を聞いたことがある人も少なくないはずだ。

確かに彼は電球をゼロから発明したわけではないし、フィラメントのある電球の原理を開発したわけでもない。エジソンの功績は「電球のフィラメントに竹を使うことで1200時間の連続点灯を可能にしたこと」であり、この技術をもとに、1880年に実用的な電球を発売した。

ただ、だからと言って、「エジソンは人の研究をパクって改良しただけ」と切り捨てるのには無理がある。

「巨人の肩に立つ」という言葉があるように、先人たちが積み上げた仕事の上に多くの発明がある。すべての発明は“真似”から始まるといっても言い過ぎではない。

彼は発明家と同時に敏腕経営者だった。1882年に設立したエジソン電気照明会社が、のちに時価総額世界一位となったゼネラルエレクトリック(GE)の前身の会社であることからも、それは分かる。

独創性やイノベーションだけで経営は成り立つのか

エジソンが経営者として有能だったのはまさに“真似”ができたからだろう。

ビジネスにおいて真似は決して恥ずべきことではない。日本の電機メーカーだって欧米メーカーを真似することでキャッチアップして、1980年代末から90年代初頭には世界で敵なしだったことからも、それは明らかだろう。

「経営には独創性が必要だ」「真似してばかりしているからイノベーションが起きない」

そんな指摘は21世紀になってから聞き飽きるほど聞こえてくるが、立ち止まって考えてほしい。果たして自社は世界の先端を走っているのか、市場のガリバーなのか。先行者でなければ、まだまだ真似することはあるのではないか。真似に徹してみるのもひとつの立派な戦略なのである。

(毎週水曜日連載、#40に続く)