SOMPOホールディングスの「取締役会」は何をしていたのか【ガバナンス時評#7】

「社外取締役」の本来あるべき役割とは

そもそも、白川社長は「成績が良い」ことを理由に2022年4月、わずか51歳にして損保ジャパンの社長に一本釣りされた。いわば、櫻田体制の“プリンス”と言っていいだろう。そうした櫻田会長の威光を背にした白川社長が、ミーティングで異論を退けて「未来志向で考え、取引再開を」と言えば、他の役員は従わざるを得ない状況が社内にあったのではないか。

一方の白川社長にしてみれば、自分を引き上げてくれた櫻田体制に傷をつけるような話題を、櫻田会長の耳に入れたくなかったはず。つまり、忖度が働いたということだ。役員ミーティング時点では、目先の売り上げ低下を回避するためにビッグモーターとの取引を続ける決断をしたのであろうが、結果的には、会社の信用を大きく損なうことになってしまったのである。

事実、中間報告書でも〈白川社長としては、社長に就任したばかりで、100億円あった数字が例えば20億円になってしまったというようなことは経営者としてはどうしても避けたいという気持ちがあり〉と記載されている。

親会社の監督責任を問われる事態に……

ところで、SOMPOHDの取締役、特に社外取締役たちにも疑問の目を向けなければならない。指名委員会等設置会社の同社の取締役会は12名で構成されているが、そのうち社外は9名もいる。すでにビッグモーターによる保険金の不正請求問題が報道された時点で、社外取締役の誰か一人でも、SOMPOHDや損保ジャパンに対して「本当に問題ないのか」との問い合わせを行った者はいなかったのか。

これまで社外取締役や社外監査役等の社外役員を務めてきた自分自身の経験から、仮に会社の信用を毀損する可能性のある何らかの報道があれば、会社の監査役室や内部監査の担当者に対して、「こういう報道が出たが、会社は大丈夫なのか?」と問い合わせることを心掛けてきた。社としても、社外の取締役や監査役から指摘や質問が入れば応じないわけにはいかず、積極的に必要な情報を収集してくれるはずである。

特定の人物に責めを負わせることを目的とするのではない。組織的にどうなっているのか、問題はないのかという健全なコンプライアンスの視点から組織の活動を監督するのが社外の取締役や監査役の仕事である。特に社外取締役の場合、内部の人では言いにくい、社長にとって耳の痛いことを言う役割を担わなければならないのである。

現在、社外取締役への女性有識者の登用がトレンドとなっているが、どんな属性であれ、ガバナンスとは何かという基本的な問題について十分な知見を有していなければ、役割を果たすことはできない。単なるオブザーバーやアドバイザーではないことを、取締役を担う本人自身が肝に銘じる必要がある。

今回のビッグモーターに端を発した損保ジャパンの問題は、そうしたことを再考せずにはいられない事象であるといえる。

次回#8に続く

取材・構成=梶原麻衣子