日大の林真理子理事長に「ガバナンス力」を期待するのは酷である【ガバナンス時評#6】

“学校法人は悪事を働かない”という「性善説」

日大の体育会はそれぞれの競技や種目で優秀な成績を残し、OBを含めて関係者は「われわれ体育会が日大の隆盛を支えている」という強烈な自負を持っていることだろう。体育会が強いことが学生を集める力になっているからこそ、学内で大きな権力を持った。ゆえに、いまだ学内で体育会関係以外の者が苦言を呈することは難しい状況にあると思われる。

林氏は、これまでの大学組織の中でのしがらみのない人間だからこそ、対外的には「過去の悪弊を断ち切って再出発する日大」をPRするのに一役買ったことになろう。しかし、林理事長が「スポーツをやったことがないから」という理由で、自ら体育会にメスを入れられなかったことは批判されて然るべきである。理事長としての責任能力が問われても仕方がない問題だ。

クリーンであることと、ガバナンスに関する能力の有無はまったく無関係である。確かに林氏はクリーンではあるだろうが、巨大な組織の舵取りに不可欠な、ガバナンスに対する知識や経験は明らかに乏しいといえる。

理事長として根本から日大改革を行うのであれば、やはり、しがらみのない専門知識や経験を持った人間をブレーンとして引き連れて大学に乗り込む必要があった。だが、林氏はそうしたことさえも実現しなかった、あるいは、できなかったのである。 

報道によると、林理事長が沢田副学長を排除しようとしているのは、「大麻事件を受けて、大麻を保管していた沢田副学長が警察に聴取される可能性があり、現職のままでは私学助成金が不交付となる恐れがある」からだったという。事実、文部科学省は10月24日、2023年度についても、私学助成金の全額不交付を決定。結果、2020年度に90億円超あった助成金は3年連続の不交付となった。

大学はじめ学校法人は公益性の高い法人であり、教育機関であることで様々な恩典を受けている。固定資産税はゼロ、納税額も低いうえに、国から高額な私学助成金まで得られる。

不祥事を起こせば交付を受けられないのは当然だが、それは沢田副学長のクビを飛ばせば済む問題ではない。日大には「そもそも、こうした交付や恩恵を受けられるのはなぜか」という学校法人の使命・役割ないしは理念に対する理解が希薄であり、かつ、法人運営に関しての倫理観が欠落しているのではないか。

株式会社であれば、株主が会社に対して睨みを利かせる。では、学校法人の場合、誰が運営に睨みを利かせるのか。

今年2023年に改正された私学法では、評議会員に一定の権限が与えられている。それまでは評議会に何らの権限もなく、学校経営に関しては理事長をはじめとする理事会メンバーが取り仕切っていた。監視が緩かったのは、「子供の教育を司る学校法人が、悪事を働くはずがない」という“性善説“に基づいて運営がなされ、それが社会的にも許されてきたからだ。裏を返せば、日大はこうした性善説に甘えて不祥事を重ねてきたことになる。

林理事長には早急にガバナンスの専門家を大学内に引き入れて徹底した学内改革に臨むか、沢田副学長を道連れに自らも身を引くか、どちらかの道しか残されていない。

(次回#7に続く)

取材・構成=梶原麻衣子