大谷翔平の活躍に思う「スポーツ」に求められるガバナンスとインテグリティ【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#4】

遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所)

ワールドシリーズ第2戦、ガラガラだった日曜日のスポーツジム

先日、10月27日のことだ。ドジャーズとヤンキースのワールドシリーズ第2戦のライブ放映を見ている会員が多いのだろうか、日曜日の午前中だというのに、普段と異なり、スポーツジムのプールで泳いでいる会員の姿はほとんど見られなかった。ドジャーズに移籍してめざましい活躍をしている大谷翔平選手に日本中が注目していることを改めて実感させられる出来事だった。

しかし、日本の団体スポーツの現状を冷静に見てみると、スポーツをめぐる環境は、暴行、薬物の所持などの刑事事件、団体内部におけるハラスメント、役員による資金流用等の利益相反取引など、不祥事が間断なく発生している。

文部科学省の外局となるスポーツ庁は、不祥事の原因がスポーツ団体のガバナンスの機能不全にあるとして、2019年、コーポレートガバナンス・コードを参照して、中央競技団体および一般競技団体向けの2つの「スポーツ団体ガバナンスコード」を策定した。

【スポーツ庁】スポーツ団体ガバナンスコード
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop10/list/1412105.htm

大学スポーツを蝕む“勝利至上主義”

スポーツ団体ガバナンスコードでは、〈トップレベルの選手や指導者以外にも、対象スポーツに「する」「みる」「ささえる」といった様々な形で関わる全国の愛好者、都道府県連盟といった地方組織、スポンサー、メディア、地域社会など多くのステークホルダーが存在〉し、多様なステークホルダーの意見をガバナンス運営に反映することをスポーツ団体に求めている。

スポーツ団体は、目先の競技結果のみを追求するのでなく、スポーツをめぐる環境を発展・成長させることで様々なステークホルダーを引きつけ、次世代のアスリートを生み出す持続的成長性を実現することが求められている。

私は、ある地方エリアの大学でラクビーチームの部長を務める教員からの依頼を受け、当該エリアにある大学のラグビーチームが加盟する団体トップの諮問機関として設立された委員会の委員に就任する機会を得た。現在も加盟団体をサポートする活動を続けているので、今回は大学スポーツに焦点を当てたい。残念ながら、大学スポーツでも不祥事を根絶できていない実情が、そこにはある。

そもそも大学スポーツの原点は「学生ファースト」であり、学生が競技できる権利を確保することは大学の責務である。大学は、学生が競技をするための障害となるような不祥事が発生しない環境を醸成して、提供することが求められる。各大学は自助努力だけでなく、加盟組織と協働・連携しつつ、不祥事が発生しない環境を整備・醸成することを可能とするガバナンス体制を大学組織内に埋め込み、稼働させることが喫緊の課題である。

そのためには、大学スポーツにも存在している、勝利至上主義(勝つためには手段を選ばず、レッドカードスレスレの危険プレーにも果敢にトライしてしまう)、実力至上主義(実力があり試合に出ることが最優先される)、隠蔽・秘密主義(事件事故を起こしてもコーチ・監督・部長等に報告せずに、隠蔽して取り繕ってしまう体質)、不明瞭な処分基準・不公正な処分内容(実力至上主義を背景に、同じ事件事故でも、実力上位のプレイヤー・上級生には甘い処分、それ以外のメンバーには厳しい処分をすることがあるため、不公平感が生じてチームに悪影響を与える)、いまだ払拭されていない体育会系的な体罰(すべての団体ではないものの、通過儀礼として根絶できていない体罰等)……などの不祥事の温床・原因を是正する対応策を講じることが、先決問題となる。

具体的には、「勝利至上主義」ではなく「ダブルゴール目標」が、「隠蔽・秘密主義」ではなく「公表・オープンな説明」が、「不明瞭な処分基準・不公正な処分内容」ではなく「明確な処分基準の定めと公正な処分」が、さらに体罰は厳正な処分を課すことにより一掃するという対応策を明確に掲げ、大学側が組織的に取り組むことをコミットして、持続的に実施し、学生も自主的・自発的に対処することが必要となる。