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【大手企業訴訟ウォッチ#6】富士急、M資金、パチスロ王…創業家を巻き込む訴訟劇

耳目を集めた京アニ初公判

9月5日から始まった京アニの裁判(2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件)。事件の異常性から、その注目度は高かった。京都地裁初公判の冒頭陳述によると、コンビニ強盗の罪で服役中も獄中で書き溜め、出所後もさらに10年の歳月をかけて書き上げたという“金字塔”の小説を2017年の「京アニ大賞」に応募するも落選し、その失意の裏返しか、「盗用された」と思い込んだことが事件へとつながっていったという。そして、青葉真司被告自身は、「一言で言うと、やけくそ」(9月25日、第9回公判)と述べるなど、被害者と遺族には到底救いのない公判展開となっている。

また、凶悪さで知られる、九州の特定危険指定暴力団「工藤会」総裁でトップの野村悟被告らの控訴審も9月13日から始まった。野村被告は2021年8月、1審の福岡地裁で死刑判決が下された際、裁判長に「あんた、生涯後悔するぞ」と発言。2審は、この暴言を謝罪したことから幕を開けたが、果たして、1審判決が覆ることになるのか。

一方、企業をめぐる訴訟はどうなっているか。8月、特にお盆シーズンは裁判所関係者の夏季休暇もあって、一般的に訴訟進行がストップするのが通り相場だが、同月下旬以降、裁判所も日常のペースに回帰している。

そんななか、9月21日に東京地裁では、東京地検特捜部長も務めた石川達紘・元名古屋高検検事長を原告とする、トヨタ自動車らを損害賠償で訴えた民事訴訟がスタートした。石川氏は2017年2月、都内で男性を車ではね死亡させた自動車事故の刑事裁判で、今年5月に最高裁が上告を棄却。禁錮3年、執行猶予5年の判決が確定。弁護士資格も喪失した。

そして今回の民事裁判は、事故の際、乗車していた高級車「レクサス」に欠陥があったとして、トヨタらに損害賠償を求めているというものだ。石川氏は刑事事件の公判でも、防犯カメラの映像を証拠として提出。検察側が「誤ってアクセルペダルを踏んだ」とするのに対し、アクセルを踏んだとされる左足が車の外側に出ていたという鑑定結果を示し、突然発進したとの主張を行っていた。

しかし、少なくとも、9月21日の第1回弁論でトヨタ車の欠陥を、新たに証明する証拠が出されているわけではない。刑事事件での有罪が確定しているだけに、このあたりの論証はあまりにハードルが高いと言わざるを得ない。

それはそれとして、今回は8月から9月にかけての企業訴訟を中心にその動向をお伝えしたい。

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