【2024年12月23日「適時開示ピックアップ」】JPX、ホンダ、日産、三菱自、ソラスト、JR九州、サッポロHD
12月23日月曜日の東京株式市場は7営業日ぶりに値上がりした。日経平均株価は前営業日の20日金曜日に比べて459円高い3万9161円で引けた。先週末、米国株が高値を付けた流れを引き継いだ格好。そんな23日の適時開示は188件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
「JPX」インサイダー疑惑で元東証職員と裁判官が告発される
東証プライムに上場し東京証券取引所などを運営する日本取引所グループ(JPX)は、証券取引等監視委員会が元東証職員(12月23日付で懲戒解雇)を金融商品取引法違反(情報伝達)の疑いで東京地方検察庁に告発したことを明らかにした。
日本取引所グループはすでに、社内に調査検証委員会を設け、社員への教育研修体制や業務プロセス、情報管理体制の整備などの検証に入っている。
監視委の発表によると、この元職員は上場部開示業務室勤務で、今年1月にKDDIがローソン株を株式公開買い付け(TOB)する情報を得た。この情報を実父に伝え、実父は証券会社を通じてローソン株1200株を約1020万円で買い付けるなど、計6社分が容疑事実となっている。
JPXはまた、この件で、金融庁より金融商品取引法に基づく報告徴求命令を受領したことも公表した。
なお、この日はあと1件、金融市場を揺るがす発表もあった。
監視委は金融庁に出向していた裁判官もインサイダー取引の金融商品取引法違反(内部者取引)の疑いで、東京地検に告発したと発表。この裁判官は、金融庁企画市場局企業開示課課長補佐の時、信越化学工業が三益半導体工業(今年11月上場廃止)に対してTOBを行うことを知り、三益半導体の株100株を29万円で買い付けるなど、計10社分が容疑事実になっている。
【日本取引所グループ】証券取引等監視委員会による当社グループの元社員に係る告発について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241219541382.pdf
【日本取引所グループ】金融庁による報告徴求命令の受領について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241220542271.pdf
「ホンダ」と「日産」「三菱自」経営統合、ホンダは自社株買い発表
東証プライム上場のホンダ(本田技研工業)と日産自動車は経営統合に向けた基本合意書を結んだと発表した。持ち株会社を新設する方式で、両社を完全子会社として存続させる計画。
2025年6月に最終的な合意を目指し、26年6月の株主総会で正式に決める。売上高30兆円の巨大な自動車会社が誕生する。
両社は統合の理由について、脱炭素に向けた環境技術や、交通事故の死者をなくすために自動運転などの安全の技術の確立を挙げている。また、三菱自動車工業もこの統合に参画することも公表した。
その一方、ホンダは他のリリースと同じ16時55に、最大1兆1000億円の自社株買いを来年いっぱいをかけて実施することを発表(自己株を除く発行済み株式数の24%)。目下、株価が急伸している。
なお、日本経済新聞などは、統合は「ホンダが主導」などと伝えているが、果たして、思惑通りに進むのか。
【ホンダ】本田技研工業株式会社(証券コード 7267)と日産自動車株式会社(証券コード 7201)との 共同持株会社設立(共同株式移転)による経営統合に向けた検討に関する基本合意書締結のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241220542367.pdf
【ホンダ】自己株式の取得状況および取得中止ならびに自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ (会社法第459条第1項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241223542985.pdf
【日産】本田技研工業株式会社(証券コード 7267)と日産自動車株式会社(証券コード 7201)との 共同持株会社設立(共同株式移転)による経営統合に向けた検討に関する基本合意書締結のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241223542730.pdf
【三菱自動車】日産自動車、Honda と三菱自動車、3 社協業形態の検討に関する覚書を締結のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241223543010.pdf
医療事務サービス「ソラスト」が人権方針を策定
東証プライムで医療事務サービスなどを展開するソラスト(東京・港区)は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」といった規範に沿った「ソラストグループ人権方針」を策定したと発表した。
性別や年齢、国籍などによる「差別の禁止」のほか、「安全な労働環境の提供と適正な賃金」「強制労働・児童労働の禁止」など11項目。取り組みを検証する「人権デューデリジェンス」も盛り込んだ。
ソラストでは、医療や介護などの現場約3万人の従業員がいるという。役職員を中心に全従業員やステーホルダーにも人権尊重を呼びかける。
大企業を中心にこの数年、人権方針を掲げる企業が増えているが、今後はその実効性が問われそうだ。
【ソラスト】「ソラストグループ人権方針」の策定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241223542464.pdf
「JR九州」が“浸水隠し不正”を受けて高速船事業から撤退
東証プライムのJR九州(九州旅客鉄道)は、福岡と釜山を結んでいた船舶事業から撤退すると発表した。
今夏に発覚した高速船クイーンビートルによる浸水隠しの影響は大きく、再開を目指してきたが、船体の補強や今後の採算性を考慮した結果、全面撤退という道を選んだ。
幹部社員主導の不正によって大企業のひとつの事業がなくなった格好だ。JR九州はグループガバナンスの再建が急務と言えよう。
【JR九州】JR九州高速船株式会社の船舶事業撤退に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241209535680.pdf
「サッポロHD」恵比寿ガーデン等の再開発で三井不動産らが名乗り?
東証プライムのサッポロホールディングス(HD)は、「一部報道に関するお知らせ」とのリリースを出した。
一部メディアが、サッポロHDの不動産事業の提案募集に対して、複数の企業が応募したとの報道があったとし、「当社として発表したものではございません」「現時点において具体的に決定した事実はございません」としている。
日経新聞デジタル版が12月20日午後5時すぎに「サッポロHDの4000億円不動産活用、三井不やKKR名乗り」と題し、三井不動産や三菱地所、東急不動産ホールディングス傘下の東急不動産が提案者になり、計10組前後が入札に応じたと報じている。
同不動産事業は約4000億円規模といい、その中には恵比寿ガーデンプレイス(東京・渋谷)も含まる。ビールづくりの本業よりも注目されていると言えよう。
【サッポロHD】一部報道に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241223542419.pdf
(平日連載、2024年12月24日公表分に続く)
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