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【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#5】フランス電力EDF、イスラエル・ベゼック、ノルウェー政府年金基金、ゴールドマン、マッキンゼー

フランス電力、英原発4カ所の稼働を1~2年延長

フランス電力(EDF)は、英国で運営している原子力発電所4カ所の稼働を1~2年延長する。エネルギー安全保障を強化すると同時に、気候変動抑制に向けた目標の達成を目指す。

EDFは英国で5カ所の原発を運営しているが、そのうちヘイシャム第2原発(イングランド北西部ランカシャー州)とトーネス原発(スコットランド・イーストロージアン)の稼働を2030年3月まで2年延長。ヘイシャム第1原発(ランカシャー州)とハートプール原発(イングランド北東部ティーサイド)は27年3月まで1年延長する。

稼働が延長される4カ所の原発の総発電量は4.6ギガワット(GW)で、約700万世帯に電力を供給可能。

エド・ミリバンド英エネルギー安全保障・ネットゼロ相はEDFのプレスリリースの中で、「原発なしでは30年までのクリーンパワー(電力部門の温暖化ガス排出実質ゼロ)の達成は不可能だ。原発は極めて重要な国産クリーンエネルギーを確実に供給してくれる」と語った。

【フランス電力】EDF confirms boost to UK’s clean power targets with nuclear life extensions
https://www.edfenergy.com/media-centre/edf-confirms-boost-uks-clean-power-targets-nuclear-life-extensionsenergy

イスラエル通信ベゼック株、ノルウェー政府年金基金が“倫理基準”で全売却

イスラエルの通信大手ベゼックの全株式を、世界最大の政府系ファンド(SWF)であるノルウェー政府年金基金が売却したことが明らかになった。同基金は、ベゼックがパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のイスラエル入植地に通信サービスを提供していることについて、同基金の倫理基準に反するとしている。

ベゼックは、西岸地区のパレスチナ人にも通信サービスを提供していると主張しているが、同基金の倫理委員会は、同社は西岸の入植地でサービスを展開することを通じて「国際法の下で違法とされる入植の維持・拡大を後押ししている」と断じている。

同基金の倫理委員会は今年に入って、ガザを含む占領下のパレスチナ自治区におけるイスラエルの事業を支援する企業を対象に、より厳格化した倫理基準を適用している。

【ノルウェー政府年金基金】Bezeq The Israeli Telecommunication Corp Ltd
https://etikkradet.no/bezeq-the-israeli-telecommunication-corp-ltd-2/

米ゴールドマン・サックス、“脱炭素”金融機関連合体から離脱の背後

米金融大手ゴールドマン・サックスは、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す国際的な金融機関の連合体「ネットゼロ・バンキング・アライアンス」(NZBA)から離脱すると表明した。

NZBAは21年に発足した。現在、世界140超の金融機関が加盟。日本からは三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFG、野村ホールディングス、三井住友トラスト・ホールディングス(現・三井住友トラストグループ)、農林中央金庫の6社が加盟している。

ゴールドマンは離脱の理由を明らかにしていない。ただ、ドナルド・トランプ次期米政権は気候変動に懐疑的で、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から再離脱する構えを示している。

そんな中、今年6月には、共和党が主導する議会下院の司法委員会が、米大手金融機関などが気候変動対策や温暖化ガス排出量抑制で結託するのは反トラスト法(独占禁止法)に違反するとの報告書を提出。

ゴールドマンの決定は、次期政権下で予想される、脱炭素の流れへの逆風を先取りした判断の可能性がある。

【ネットゼロ・バンキング・アライアンス】Net-Zero Banking Alliance Bank-led, UN-convened
https://www.unepfi.org/net-zero-banking/

マッキンゼー、南ア国営企業幹部への「贈賄」認め1億ドル超の罰金支払い

米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーは、南アフリカの国営企業2社の幹部への贈賄に関与して海外腐敗行為防止法(FCPA)に違反したことを認め、罰金1億2285万ドル(約180億円)を支払うことを盛り込んだ訴追猶予合意(DPA)を米司法省と締結した。

マッキンゼーや米司法省によると、同社の南ア子会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー・アフリカ(マッキンゼー・アフリカ)のシニアパートナー、ビカス・サガール氏は2012~16年、物流関連のトランスネットSCOと、エネルギー関連のエスコム・ホールディングスの両国営会社の幹部から重要情報を得ようと賄賂を渡し、数百万ドル相当のコンサルティング契約を受注した。

米司法省は、マッキンゼーとマッキンゼー・アフリカは贈賄の見返りに計約8500万ドル(約128億円)の利益を得たと認定した。

【米司法省】McKinsey & Company Africa To Pay Over $120 Million In Connection With Bribery Of South African Government Officials
https://www.justice.gov/usao-sdny/pr/mckinsey-company-africa-pay-over-120-million-connection-bribery-south-african

【米マッキンゼー・アンド・カンパニー】McKinsey South Africa has entered into a final resolution with the U.S. Department of Justice (DOJ), and South Africa’s National Prosecuting Authority (NPA). McKinsey welcomes the resolution of these matters.
https://www.mckinsey.com/za/our-work/statements/mckinsey-statement-december-2024


(毎週火曜日連載、次回#6は2024年12月17日公開予定)

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