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遠藤元一弁護士「東芝」なぜ内部通報が多かったのに粉飾情報は届かなかったのか【不祥事と内部通報】

当局が内部通報者に年間40億円の“報酬”を支払う米国

例えば米国には、ホイッスルブロワー(内部通報者)に不祥事で企業に課せられた罰金の10~30%を支払うという制度があり、実際に2023年12月に米国証券取引委員会(SEC)が内部告発として受けた情報をきっかけとして不正行為を摘発し、企業から徴求した課徴金・民事制裁金等から、重要情報を提供した内部告発者7人に2800万ドル(約40億円)の報奨金を支給したとニュースになりました。

さらには、米司法省(DOJ)のサイトにもSECのサイトにも通報窓口に関するコーナーが設置されており、前年は何件の通報があり、通報によっていくらの報酬が支払われたかが記載されています。

米国では捜査機関が自らの係官で内偵をして不祥事を摘発するよりも、関係者による内部通報をもとに不正を検知したほうが税金を大幅に節約できると考えられています(これを「臨時の検察官」という言い方をします)。こうしたプラグマティックで効率性を重視する文化的な背景があるため、米国では「内部関係者からの通報はウェルカム」 という風土があるのです。

一方、DOJもSECの当局にしても、不祥事企業に対する課徴金のいくらかを自分たちの予算にできるので、彼らにも不祥事を調査して明らかにするインセンティブがある。つまり、双方ともにインセンティブがあるわけですので、日本に比べて、米国では内部通報が盛んと言えます。また、通報者・内部告発者に対して企業が不利益行為や報復をしないか等を当局が監視し、違反を発見した場合厳しいエンフォースメント(罰則)を課す等、通報者・告発者の保護の徹底が図られています。

遠藤元一弁護士

それでは、日本ではなぜ内部通報制度が機能しないのか――。後編では、遠藤弁護士が日本の現状を踏まえ、その処方箋を提言する。

遠藤元一弁護士インタビュー後編に続く

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