丸木強・ストラテジックキャピタル代表「2025年もアクティビストの“職業倫理”を全うする」【新春インタビュー#6】

経営者は自らのガバナンスを語れ!

2024年7月、私たちの投資先だった衣料品製造のダイドーリミテッドが大幅増配発表後、私たちが保有株を売却したことに関して、強いご批判を受けました。

私たちは株主提案を通すために相当な時間とお金を費やしましたし、株主提案が通らなくても、新しい取締役に引き続き働き掛けをおこなっていくつもりでした。しかしダイドーの株価が大きく上昇し、そこで売らないと、今度は私たちストラテジックキャピタルに投資する投資家に背くことになります。

丸木強氏

我々の活動は、そもそもダイドーの株価の上昇が目的なのであり、図らずもそれが実現してしまったということなのです。結果としてですが、24年3月末までに株主となって株主提案に賛成していただいた株主も、24年6月の株主総会までに株主となって応援いただいた株主も、みなさん儲かっているのではないでしょうか。

私たちは「アクティビスト」(物言う株主)と呼ばれても、投資運用業者であり、職業倫理上、株価が上がったら売らなければならない。さまざまなご批判は承知していますが、売却したのは“プロ”のアクティビストとしての職業倫理を全うした結果なのです。この行動規範はどのような批判があれ、2025年もまったく変わるものではありません。

このように、それぞれの職業にそれぞれの倫理があります。その意味で、上場企業の経営者は、株主価値の最大化のために努力すべきという職業倫理を良くご理解いただきたいと思います。そして、コーポレートガバナンスについて経営者に申し上げたいことは、「あなたご自身でよく考えてほしい」ということです。

コーポレートガバナンス・コードにしても、東証の要請についても、各企業の事務方が一生懸命に対応策を考えて実行しているわけですが、日本企業の場合、どうも社長自身の考えそのものが見えてこない。

そもそも、経営者自らがコーポレートガバナンスについて考えたことはあるのか、資本コストを理解しているのか。多くの経営者と対面してきましたが、自らの信念を語り得る社長がどれだけいたかと振り返ると、あまりに心許ない。

2025年は経営者が自らのコーポレートガバナンス像を語り得る時代の幕開けとなることを切に願いますし、それが日本企業、そして日本経済の真の再生になると考えています。

(取材・構成=編集部)