丸木強・ストラテジックキャピタル代表「2025年もアクティビストの“職業倫理”を全うする」【新春インタビュー#6】
ウルフパックはダメで「政策保有株主パック」は許されるのか
現在、日本の上場企業数は約3900社。単純に比較はできませんが、欧米に比べても非常に多いと言わざるを得ません。
日本の経済規模は米国の6分の1程度にもかかわらず、上場企業の数は米国の8掛け程度もある。1社当たりの時価総額も小さく、とりわけ時価総額の小さな企業は機関投資家からは投資の対象にすらなりません。
ただし、日本の上場企業の数は、そのスピードは置くとしても、減少する可能性は十分にあると思います。
そのトリガーのひとつが政策保有株をめぐる動きです。いわゆる持ち合い株で、これが減る方向にあるのは間違いない。肝は岩盤的に持っている会社、業界の理解が進むかどうか。
とはいえ、私たちの投資先企業でも、いまだに持ち合い株の話をすると、感情的になって逆ギレするようなところもあります。“安定株主”がいないと不安でしょうがないのでしょうが、そもそも株主から預かった資産を使って取引先の株式を買い、その取締役個人の“地位保全”に協力していいのか、という根本的な問題があるのです。
また、投資ファンドの「ウルフパック」(群狼戦術、複数の投資家が協力関係を隠しながら、一気に当該上場企業に攻勢を掛けて株主還元などの要求を実現させようとする投資戦術)が話題となるなら、「政策保有株主パック」も話題にならないとおかしい。
政策保有株主は、互いに会社側の提案に株主総会では自動的に賛成することにしているわけですから、これはウルフパックで問題視される「共同保有」にほかなりません。それなら、これらの株主が合計で5%以上になるなら金融商品取引法(金商法)に則って大量保有報告書の共同保有者として公表しないと、法律違反の疑いがあるのではないでしょうか。
会社法の解釈・運用でも経営者側に有利で、株主側が不利になるようなケースは結構存在するのが現状です。
経営者の責任追及に関しても会社法上はなかなか難しくて、善管注意義務違反と言っても、例えば高値の買収オファーを蹴って安値のオファーの会社などに身売りした場合、「経営判断」という同じような考え方であっても、米国だったら経営者の責任が問われますが、今のところは日本では、株主側が裁判で勝つことは困難でしょう。
また、会社から株主に交付する書面は電子的方法が認められる一方で、株主が開示請求する株主名簿などは電子データではもらえないし、議決権行使書の株主提案議案に対し株主が印を付けずに送ると「反対」と取扱われ、会社提案の場合は「賛成」と取扱えるとか、色々あって語り尽くせません。総会屋時代の名残でしょうが、株式会社の主権者である株主に対して非常に不親切な状況は現在もほとんど変わっていません。
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