丸木強・ストラテジックキャピタル代表「2025年もアクティビストの“職業倫理”を全うする」【新春インタビュー#6】
ニデックがこじ開けた「同意なき買収」のインパクト
このほかには「同意なき買収」の動きも注目されます。
2023年にはニデック(旧日本電産)が東証スタンダード上場の工作機械メーカー、TAKISAWAに買収提案すると発表しましたが(同年9月にTOB=株式公開買い付けを実施、24年2月に完全子会社化)、その後、上場企業による同意なき買収が本格的に始まりました。
さらにニデックは24年末に今度はプライム上場の牧野フライス製作所にも同意なき買収を仕掛けており、同社のお家芸になった感すらあります。
そんな中でカナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールによるセブン&アイ・ホールディングスの買収提案も注目されます。これは同意なしではやらないそうですが、こうした買収の動きが日本企業の間でどのくらいの範囲や速度で広がっていくのか。
企業の経営権をめぐる視点で言えば、気になるのが四大(西村あさひ、アンダーソン・毛利・友常、森・濱田松本、長島・大野・常松)に代表される大手法律事務所をはじめとする周辺プレイヤーの動きです。
これまで日本の大手法律事務所は“経営判断”として「専守防衛」に徹するのが通例でした。というのも、買収提案を行うのは主に投資ファンドで、買収される側が上場企業だったからです。だから、日常の顧問関係からしても、クライアントである上場企業経営者を守る立場だった。
しかし今後、買収側も上場企業になると、その構図が徐々に変わってくるでしょう。米国の大手ローファームはどちら側にもつくわけで、日本でもそういう雰囲気が出来てくれば、同意なき買収のプレイヤー層がもっと分厚くなっていくはず。これは日本の大手証券会社やフィナンシャルアドバイザーについても同様に言えることです。
そのような意味でも、上場企業による同意なき買収は日本の株式マーケットを揺るがす大きな地殻変動になる可能性を秘めていると言えます。
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