日本で「親子上場」がなくならない本当の理由
2025年への“期待”ということで言えば、親会社が50%以上の株を持つ子会社が上場している「親子上場」問題の前進です。
日立製作所は20社以上もあった上場子会社をなくしましたが、親子上場に関しては、資本コストの改善に乗り出した東証も今までは腰が引けた状態。23年末に「従属上場会社における少数株主保護の在り方」研究会の報告書を出したものの、親子上場の存在を前提とした内容を提言するにとどまっています。
【日本取引所グループ】従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会
https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/study-group/index.html
海外では親子上場は少ないのですが、日本企業全体ではまだまだ現状を維持したいムードが強い。しかも、株式の過半を握る連結子会社だけではなく、持分法適用会社のような20~30%程度の株式を筆頭株主として保有しているケースも依然として多い。
なぜ親子上場がなくならないか。それは親・子会社の企業価値や株主価値を向上させようという考えからではなく、親会社の人事政策の面が強いのではないでしょうか。例えば、親会社の取締役になれないような人材を、子会社の役員に処遇してグループ全体の人事ピラミッドを維持するといった具合です。
子会社をつくれば、別の会社ですから、新たに人事部なりに経理部なりをつくる必要がある。そうすると、間接コストも上がるわけです。これは経済合理性を無視した、高度成長型の日本企業独特の慣習としか考えられません。
子会社として本当に良い事業会社で、親会社として株式を持つ価値があるならば、本来は親会社の株主のためにも100%の株を持つべきです。なぜ、20~30%といった株式を中途半端に持つのか。逆に、株を持っていて意味がないならば、すべての株を売ってしまえばいいわけです。
日本製鉄が進める米USスチールの買収計画をめぐっては新年早々、バイデン米大統領が阻止する命令を出ました。日鉄側は米政府を提訴する考えのようですが、そもそも日鉄はUSスチールの100%株主となる構想でした。
ところがその日鉄には日本国内に50%超の株式を保有する上場子会社が3つもあるのです。なぜUSスチールのような100%保有ではないのか。もし日米での対応を区別して国内上場子会社を維持するなら、それらの少数株主を軽視していると言われても仕方がない二重基準でしょう。