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髙田明・ジャパネットたかた創業者「息子に社長を譲って会長に就かなかった理由」【新春インタビュー#5前編】

社長退任後、会社の会議には1度も出てません

2010年に家電エコポイント制度と地デジ化の影響でテレビの買い替え需要に支えられ、1759億円という過去最高の売り上げを出しましたが、その後の2年間は反動で売上高が約600億円、経常利益も約半分にまで減りました。

僕自身は特に気にしていなかったのですが、社員たちの不安を払拭し、鼓舞するためにも「13年に最高益を達成しないと社長を辞める」と宣言しました。

結果、息子を中心とした社員みんなの頑張りで、目標を大きく上回り、社長を続けることになったのですが、反面、もう次に任せてもいいのかなという想いも出てきて、息子に「(社長を)やってみるか?」って何回か言いました。その時は「まだまだ」っていう感じでしたよ。

普通はそこまで売り上げや利益が上がったら、もっとトップとして頑張ってやって行くぞという人が多いのかもしれないけど、僕はまったくそうは思いませんでしたね。「もう僕、辞めるから代わりにやってよ」っていう感じ。「じゃあ、2年後ぐらいに辞める」って言いましたけれども、結局、早めて1年後に辞めちゃったんです。

息子からは「会長として残ってよ」って言われました。でも僕が一番思ったのは、僕の方がテレビやラジオに出て顔と名前は知られているわけですから、社長の権限を委譲したとしても、私の方に相談が来たりするでしょうし、会長として会社に残れば、どうしても口を出したくなるかもしれないじゃないですか。だから、「これ、違うな」って思って。

髙田明氏(撮影=矢澤 潤)

しっかりケジメをつける意味でも会長には絶対にならないと、パッと身を引きました。

あれから早10年が過ぎましたが、会社の経営に関する会議には1回も入っていません。本当にまったく出てない。

今でも、僕は人から「(ジャパネットたかたの)会長」って呼ばれることがあるんですけど、本当に会長じゃないですから(笑)。ジャパネットの社長は退任しましたが、個人会社のA and Liveの代表ではあるので、今も社員たちからは「社長」と呼ばれます。僕の孫は全員、僕のことを「社長」と呼びますよ。(笑)

息子に社長を譲る時に「陰ながら応援するよ」と言いましたけど、たまに「大丈夫?」とは聞きます。すると、息子には「お父さん、僕はやってみて、万が一失敗しても失敗から必ず学ぶから、そこを信じてよ」って言われます。良いこと言うな、と思いますね。やるな、髙田旭人! 今ではそういう想いです。

もちろん期待はしていましたけど、当然、不安もありました。でも、良い形でね、彼なりにやってくれている。僕自身、ものすごく走ってきた人間ですけども、彼がこんなに走る人間だとは思ってもみなかったですね。

たまにもう少しブレーキを踏んでもいいのではないかと思うこともあります。

とは言っても、彼はこれからも走り続けるだろうなぁ……。ただ、僕が存命のうちに、本当に悩みに悩んだ末に僕に聞いてくる、そんな年齢の時期が来ることもあるでしょうね。

一方、僕が息子のような年齢の時は創業期だったから、なにがなんでも走らなきゃいけなかったんですね。ところが、今はジャパネットたかたを安定的に成長していかないといけない時代。安定させていく、持続させていくっていう時には当然、経営のやり方も変わってきます。

創業期の精神で行くと、どうしても今の時代と合わないところが出てしまう。そういう点では良い時にバトンタッチできたんじゃないかなと、心底思っています。

(取材・構成=編集部、後編に続く

髙田 明:ジャパネットたかた創業者・A and Live代…
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