2024年も続いた「品質不正」から考える“経営者のリーダーシップ”
一方、2024年も大手メーカーなどで品質・検査不正が相次ぎました。17年に神戸製鋼所などを皮切りに発覚したものですが、いまだ収まっていません。
これまでのケースを見ると、検査を担う品質管理部門の位置づけに問題があったことが多数報告されている。つまり、本来独立しているべきはずの品質管理部門が、工場長をトップとした生産サイドの組織の中に組み込まれ、問題を指摘し辛い風土があったという指摘です。
人事ローテーションが滞っていたことも問題視されてきました。長年、検査を担当していた社員が絶対的な自信を持ってしまい、内外からアドバイスやクレームがあっても、聞く耳を持たないというケースです。
ところが、これだけ他の会社で同種の品質不正が起きても、それを“他山の石”として、自社の体制を見直すことができず、依然各社に飛び火している。不正や不祥事が発覚した他社を見て、「なぜこうなったのか?」という分析を行っていないのです。
さらに、経営陣の課題も指摘されています。表向きは品質や検査に適切に取り組むよう全社的な指示を出しておきながら、現場では「コストをかけるな」「期限を守れ」と言われたら、どうなるでしょう。間違いなくジレンマに陥り、困った現場スタッフが不正に走ることも容易に想像できます。
私が務めていた三井物産でも02年から04年にかけて大きな不祥事を引き起こしました。特にディーゼル車の排ガス装置(DPF)のデータ不正の衝撃は強く、当時の槍田松瑩(うつだ・しょうえい)社長が危機感を持ち、「良い仕事」という取り組みを始めたのです。
自分のやっている仕事は、世の中にとって役に立つのか、お客さまにとって有益なのか、そして自分自身のやりがいにつながるのか――そういうことを考えて「良い仕事」をしようと、全社員に呼びかけました。不祥事があってこそ、三井物産は初めてそんな地平に辿り着いたのです。
この取り組みは全社的に昇華されたものですが、やはり、槍田さんのリーダーシップが大きかった。コーポレートガバナンスにおいて社外取締役の役割はもちろん大事ですが、最後はやはり、経営トップその人なのです。

不正防止・検出における監査役の役割と「内部通報」の力
そんな中、執行を監視する監査役等(取締役監査等委員、監査委員含む)が、不正を検知できるのかという問題があります。
そもそも、監査役等のもとに配置されている専任スタッフは十分な数とは言えない状況です。そのため、監査役等は内部監査部門から上がってくる情報に依拠せざるを得ないのですが、同部門はほとんどの場合、社長など執行の指揮下にあり、監査役等に十分な情報が集まってくるとは限りません。
そこで監査役等が頼りにすべきは「内部通報」です。
ただ、通報の中身は玉石混交で、各種ハラスメントの訴えはともかく、不平不満を並べ立てただけのものというケースも多いと言います。これでは通報現場が疲弊するのも当然ですが、それでも、通報には何らかの不正の“根”があることが多い。そういった兆候を見逃してはいけません。
とはいえ、内部通報制度が正常に機能しているかというと、疑問と言わざるを得ない。通報したことによる人事上などの報復を恐れて、制度を使うのに躊躇する社員がいまだ多いようです。
「報復されることは絶対にない」という信頼感をどう組織内に醸成するか。まずは、経営者がその姿勢をどこまで示せるかにかかっていますが、通報者を守ることを周知し、それを担保する役割が、監査役等にもあるでしょう。