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起訴から9年越しの“無罪”になった「LIBOR“不正”操作事件」元日本人被告【逆転の「国際手配3000日」#2】

日米“ヤメ検”弁護士の連携

起訴取り消しを勝ち取れた要因としては、日米の弁護士の効果的な連携も大きかった。

入江弁護士は米国留学経験があり英語が堪能。そして、連邦刑事事件に強いコビントン・バーリング法律事務所に伝手があった。

コビントン・バーリング法律事務所は1919年、ワシントンで設立された。米政府機関にも人材を輩出していることで知られており、そうした人材は政府勤務後、再び古巣に復帰するケースが多い。現在、著名な元当局者としては、元司法長官のエリック・ホルダー氏、元司法省刑事局長のラニー・ブロイアー氏らが在籍している。

ホルダー氏の経歴を見ると、司法省→連邦検事→司法副長官→コビントン→司法長官→コビントンと、“華麗な”キャリアを積んでいる。

日本では官から民への天下りはあっても、その逆は一般的ではない。それに対し米国のプロフェッショナルの間では、公的部門と民間部門を行き来する、「リボルビングドア」(回転扉)と呼ばれる双方向の人材移動は珍しくない。

ジェシー・アイジンガーの『The Chickenshit Club』(未邦訳)によれば、ブロイアー氏は2013年3月の退官後、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、リボルビングドアについて「民間部門での深い経験があったからこそ、司法次官補(司法省刑事局長)としてもより良い仕事ができたと信じている」と語っている。

逆も然りで、公的部門での職務経験や知見、人脈が、法律事務所での業務に生かされているのは想像に難くない。『暴君誕生――私たちの民主主義が壊れるまでに起こったことのすべて』(ダイヤモンド社)などの著書で知られるコラムニスト・作家のマット・タイービは、「コビントンは実質的に影の司法省のような存在になりつつある」と指摘している。

ちなみに入江氏は“ヤメ検”弁護士、相方のコビントン・バーリング法律事務所の弁護士も元連邦検事だ。日米の“ヤメ検チーム”の連携で、本村氏の公訴棄却を勝ち取ったとも言える。

それにしても、気になるのが「費用」の問題だ。米国の弁護士費用はトップクラスの場合、1時間当たりのタイムチャージが日本円で30万円を超えることも往々にしてある。弁護士報酬に関しては、コビントンと折衝したのが入江弁護士だったことで、“相場”よりも割安で済んだ。それでも、本村氏にとって、長年の弁護士費用は大きな負担となった。

(#3に続く)

米法曹関係者の発言から垣間見える問題点 ドイツ…
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