英国に降り立った「LIBOR“不正”操作事件」元日本人被告の過酷【逆転の「国際手配3000日」#1】
有吉功一:ジャーナリスト、元時事通信社記者
【関連特集】日本企業を襲う「海外法務リスク」の戦慄 はこちら
1人の日本人ビジネスマンが今年7月、英ロンドンのヒースロー空港に降り立った――。
この男性が、国際的な金融事件に関与したとされ米国で起訴されるという経験の持ち主であることは、羽田発の便に搭乗していた他の乗客には、知る由もなかった。その特異な経歴ゆえに、男性は入国審査を通過するまで内心穏やかではなかった。嫌疑は1年前に晴れ、もはや法的にも海外渡航は問題ないはずだった。それでも審査で引っかからないか、不安だったのだ。
本村哲也氏(52)。
かつてオランダの金融大手、ラボバンクの東京支店でマネジングディレクターとして、順調にキャリアを積んでいた。
本村氏が関与したとされたのは、2008年のリーマン・ショックを契機とした世界的な金融危機の中で、にわかに耳目を集めることとなった、国際的な金利指標である「ロンドン銀行間取引金利(LIBOR、ライボー)」の“不正”操作事件だ。本村氏は、06年5月~10年末頃に関与したとされ、14年4月、米国から「共謀罪」で起訴された。
事件では、欧米の大手金融機関が相次いで摘発され、巨額の金銭的ペナルティーを科された。本村氏をはじめ多数の市場関係者も訴追され、一部は収監された。
本村氏は、日本にとどまって米当局と闘い、昨夏、公訴棄却を勝ち取った。ただそれまでは、米国に身柄を引き渡されるのではないかと怯え、生活やビジネスにも多大な影響を受けながら過ごした。
それだけに、本村氏にとって10年ぶりの海外渡航は、晴れて自由の身になったことを、文字通り身をもって確認する旅でもあった。
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