【経営者と女性スキャンダル#4】金野志保弁護士に聞く「不適格トップ」を排除するための“平時の準備”と“有事の即応”

“ネットに晒される時代”における「経営者のリスク管理」

――昨今のセクシャルハラスメントや不倫など、経営者の異性をめぐる問題(ほとんどが男性経営者)は、日本企業の取締役会、そして企業全体に「多様性」が浸透していないことの現われと考えられるでしょうか。また、女性(非男性)の社外取締役が増えれば、こうした不祥事を起こす(男性)経営者は淘汰されるとお考えになりますか。

読者の関心事は「取締役会に女性を入れれば、こういった企業トップのスキャンダルは防げるのか」ということではないかと思うのですが、この問いに端的に回答すれば、「女性を入れたから防止できるというものではありませんが、多様な目で監督することは監督の実効性を高めるため、取締役会の多様性はこのようなリスクを低減することに資すると思われます」ということになるかと思います。

2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂で、取締役会に関してジェンダーや国際性といった多様性の確保について規定されたのは、当時の委員会議事録を見ますと、多様性は取締役会の監督機能を高めるという趣旨であったことが分かります。ジェンダーの多様性に限りませんが、多様な目で監督をすることが不祥事を防止することにつながることは、過去多くの企業不祥事が、多様性の欠落した同質性の高い経営によって生じていることを見ても明らかかと思います。なお、女性が1人でも取締役会にいる企業は、1人もいない企業よりも不祥事が少ないというデータも複数見られます。

――最後に、企業経営者が持つべき“この時代における倫理観”について、金野先生はどのように考えれますか。

企業トップの一挙手一投足は多様なステークホルダーからの関心の的であり、何かあればすぐにメディアやSNSに晒される現代、トップたるもの常にそれを意識して行動すべきでしょう。これは倫理観というよりは企業トップとしての当然のリスク管理です。自分の行動は私的エリアも含めて常に360度から見られている、企業トップあるいは企業トップとなろうとする者は常にそう肝に銘じて行動すべき時代ではないでしょうか。

セクハラ、不倫等がメディアにリークされる企業トップは「ガードが甘すぎる」という誹りを受けてもやむを得ない、平素から自らの行動を律することが危機管理の観点から必要であるということを認識すべきであると思います。

そして社長・CEO以外の取締役も、万が一自分たちが選任した社長・CEOがセクハラ等の事件を起こした場合は、自らの選任ミスの責任を問われる可能性すらあります。社内の論理のみで出世の階段を上がってきた人物を単純に承認するだけの選任を行うことがないよう、十分に留意する必要があると考えます。

最後に、これまでの話は主として昨今多く見られる男性の企業トップの不適切行為を念頭に置いてのものですが、女性トップの不適切行為の場合であっても対応は同様であることを念のため申し添えます。

(取材・構成=Governance Q編集部)
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