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【経営者と女性スキャンダル#3】フィフィが語る「不倫もパパ活も社長が”即刻退場”にならない日本の緩さ」

フィフィ:タレント・コメンテーター

特集#1#2から続く)不倫・不貞行為に象徴される「経営者の個人スキャンダル」をさまざまな視点から検証する本特集。#3では社会問題に舌鋒鋭くコメントするエジプト出身のタレント・コメンテーターのフィフィさんに、海外と比較して、女性問題が発覚した際の日本の経営者および企業のリスク管理の甘さについて語ってもらった。

経営トップの女性スキャンダルが「絶対NG」な3つの理由

4月17日にウエルシアホールディングス(HD)の社長が、自身の不倫を理由に会社側から辞任勧告を受け辞任しました。私はその日にX(旧ツイッター)で、〈これ、夫婦間でOKでも、会社としてはアウト。仕事上の恋愛関係が許されないのは、立場を利用したものがあるから。上の誘いに断れない人もいますからね。また贔屓だけでなく、“ゆすり”も発生しますから。〉と投稿しました。これに対し、「会社のお金を横領したわけでもないのだから、会社の判断は行き過ぎでは?」という意見もありましたが、そんなことはありません。

ウエルシアHDに限らず、石油元売り最大手のENEOSグループや、タイヤ大手の横浜ゴム、光学機器メーカーのタムロン、エネルギー事業を手掛けるTOKAI HD……経営トップによる女性問題は驚くほど多い。

なんでそんなに多いかと言えば、日本は他の先進国と比較して管理職以上に対するコンプライアンスが緩すぎるからの一言に尽きます。

米国のケースですが、2018年にはインテルCEO(最高経営責任者)だったブライアン・クルザニッチ氏が「従業員との不適切な関係」でCEOを辞任、19年にはマクドナルドCEOのスティーブ・イースターブルック氏が従業員との関係を理由に解任(その後の調査で、同氏は複数の従業員と関係を持っていたことも発覚)、そして20年にマイクロソフトの取締役を退任した創業者のビル・ゲイツ氏は、取締役退任の真相が女性従業員との不倫だったと21年の米国ウォール・ストリート・ジャーナルによって報道されました。

このように、米国では管理職を対象に、部下や取引先など仕事に関わる人物との恋愛や性的な関係を禁止する社内規範を設けている企業が多数あります。まともな会社であれば一発アウトになるのです。

離婚こそしていないけど「夫婦関係が冷めきっていたのなら、不倫は責められないのではないか」、経営者が独身だとしたら「恋愛は自由だから、相手が部下でもいいじゃないか」といった意見も聞きますが、ダメです。許されません。その理由は3つあります。

ひとつは、上司や取引先といった「上の立場」からの誘いを断れない人がいるからです。

自分は「自由恋愛」だと思って相手(部下や取引先の関係者など)を誘っても、相手が同じ感覚とは限りません。上下の違い、立場の違いがある中で、仕事に関わる人間と恋愛関係を持ってはいけないんです。本当にその人のことが好きで恋愛がしたいのであれば環境を変えるしかありません。潔く自分の立場を捨てて、仕事のストレスもなく、罪悪感も抱くことなく、愛する人との時間を謳歌すればいいんです。

2つ目は、仕事上の関係がある人物と色恋沙汰になると、正常な取引・正常な商取引ができなくなる場合があるからです。

社内でも取引先でも「あの子がいるから優遇しよう」という贔屓が生まれます。そうすると第三者からは「あの人、仕事のクオリティが低いのにいつも評価されているよね」とか、「取引先がいつもあの会社なのはなぜ?」といった疑問が湧いてきますし、周囲はいい気分はしません。つまり自分では隠し通しているつもりでも、“二人の関係”は意外とダダ洩れになっているものだからです。

さらに、二人の関係がこじれた時にも問題は出てきます。関係が悪化した、あるいは別れたことで、異動になった、取引が減った、となれば純粋な評価が下されたとは言い難くなる。仮に恋愛の関係なく正当な評価だったとしても、相手が「評価が下がったのは別れたからだ」「取引がなくなったのは関係が終わったからだ」と思うリスクも孕んでいる。これが次につながることにもなります。

それが、3つめのハニートラップのリスクです。

自分は「モテる」と鼻の下を伸ばしているかもしれませんが、実は交際相手はライバル企業から送り込まれた“刺客”の可能性だってあります。懇意になることで会社の情報を盗み取られることもあるだろうし、自社であってもライバルから「あいつの権力が強すぎるから降ろしてやろう」と足を引っ張るための要員かもしれません。関係が悪化した時に、「今までのことをバラす」と脅迫されるかもしれませんし、格好のネタとして週刊誌に売られることだって考えられます。

このくらい、上に立つ人にはさまざまなリスクがついて回るんです。一般従業員のそれと違って、女性関係でトラブルになったら“男女間のもつれ”といった話だけでは済まされない。「会社のカネを使ったわけではないし、社長個人のことだから目をつむる」という会社の感覚、コンプライアンス意識の低さが問われるんです。

さらに、世の中では女性問題や不祥事に対する価値観が変化しているのに、その価値観に付いていけない日本の経営者と会社の多さには本当に呆れます。「昔なら許された」と思うかもしれませんが、昔だって許されていません。ただ問題にならなかっただけ。表沙汰にならなかったから「許された」と勘違いしているだけなんです。

こういった価値観の変化について、社内で進言できる人材や部署がないのであれば、外部に委託して「今はこういうことをしてはNGです」と定期的に教えてもらわないといけません。上司、ましてや経営陣を教育することって日本では失礼にあたると考えられがちですが、そんなことはありません。古い考え方を改める、価値観をアップデートするのは本人のためですし、ひいては会社のためになるんです。

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