吉野ヒロ子:帝京大学文学部社会学科 准教授/ 日本広報学会理事
(特集#1から続く)不倫・不貞行為に代表される「経営者の個人スキャンダル」をさまざまな視点から検証する本特集。#2ではネット炎上を研究し、日本広報学会理事でもある帝京大学文学部社会学科の吉野ヒロ子准教授に、トップに個人的な不祥事を起こさせないために企業広報ができること、そして、不祥事が世間に知られた際の立ち回り方について聞いた。
常に価値観のアップデートが求められる経営者
近年、企業の倫理的責任の範囲は以前と比べ、非常に大きく広がっています。例えば、「ボロ家ハラスメント」などと言われ大炎上しているいなば食品。昭和の時代だったら「社員寮なら、まあ仕方ないか……」で終わったかもしれませんが、令和においては通用しません。
私は2015年頃からネット炎上の研究をしているのですが、以前ならスルーされていたようなことでも“燃え上がる”ケースが出てきていると感じます。
それでは、広報担当者は、ネットで炎上を起こすような不祥事を防ぐために何をすべきなのか。そして、期せずして起きてしまった時はどう立ち回ればいいのでしょうか。
最近だと、ドラッグストア最大手のウエルシアホールディングス(HD)の社長が、自身の不倫を理由に社長を辞任する事態に発展しました。さらに、石油元売り首位のENEOSでは2年間で本体のトップ2人、グループ会社会長の1人の合計3人もの経営者がセクハラを理由に辞任・解任されました。
2022年には、タイヤメーカーの横浜ゴム社長が26歳の大学院生と沖縄でパパ活旅行をしたことを『週刊文春』がスクープ。同年にはスノーピークの女性社長が既婚男性との交際と妊娠を理由に辞任しています。さらに遡ると、2020年には、若い女性向けのアパレルブランド「アース ミュージック&エコロジー」などを展開するストライプインターナショナルの創業社長が、複数の女性社員に対してわいせつ行為を強要していたことが発覚して辞任するなど、挙げだしたらキリがないくらい、経営トップのスキャンダルは枚挙に暇がありません。
近年、不倫スキャンダルに対する社会の目がどんどん厳しくなっています。こうした不祥事を起こさないために、広報は経営トップに対して「かつてはセーフだったかもしれないことが今は命取りになる」ということを日頃から知らせておくこと、きちんと進言することが重要な仕事になります。
そもそも広報部門というのは、取材対応などを通じて外部の意見を聞く機会の多いセクションです。「今、世の中はどのような事に関心を持っているか」を社内で最も知る立場で、そうあらねばなりません。ですから、常にアンテナを張り巡らせて世間の動きを把握し、それを経営陣に伝えるのも重要な業務なのです。
特に経営トップになる方は、年齢的に経験も知見も豊富な反面、「変化」を嫌がる年代でもあると思います。仮に一般従業員であれば許されることかもしれませんが、経営者である以上、一般従業員よりも高いモラルを社内外から求められます。よって、自身を取り巻く環境のアップデートが必須になるのです。