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第8回【坂東眞理子×八田進二#1】男社会の経営者に「女性活躍の意義」を知らしめたい

八田進二・青山学院大学名誉教授が各界の注目人物と「ガバナンス」テーマに縦横無尽に語り合う大型対談企画。シリーズ第8回目のゲストは、内閣府の初代男女共同参画局局長を務めるなど、女性活躍の先駆的存在にして、ベストセラー作家、そして、現在も昭和女子大学総長として教育現場に携わる坂東眞理子氏である。その一方で、MS&ADホールディングス(HD)、アサヒグループHDなど上場会社の社外取締役として、企業経営にも参画してきた。そんな坂東氏が考えるガバナンス論とは――。

社外取締役は「公器」たる企業に“社会全体の視点”で監視し助言する仕事

八田進二 坂東さんは、日本における数少ない女性活躍の先駆的存在です。しかも、中央官庁退官後は、誤解を恐れずに言うならば、魑魅魍魎うごめく学校法人経営で実績を上げられ、社外取締役としての経験も豊富で、ぜひとも一度、ガバナンスについて議論をさせていただきたいと思っていました。

坂東眞理子 ありがとうございます。大変光栄です。私は1969年に総理府に入省していますが、2001年に内閣府男女共同参画局長の職に就いたことから、社会における女性活躍を推進する立場を貫いてきました。

八田 学校法人経営については、のちほどおうかがいするとして、まずは社外取締役についてお話を聞かせてください。社外取締役の役割ですが、ずばり、坂東さんはどうお考えでしょうか。

坂東 上場会社はソーシャル・インスティテュート、社会の公器だから、外から見たらどうなのかということを、企業の中の方たちに伝えるというのが社外取締役の役割なのではないかと、私は考えています。株主資本主義とか、会社は誰のものかという議論がありますよね。出資者(株主)が有力なステークホルダーであることは言うまでもありませんが、その製品やサービスを受け取っている消費者、その会社で働いている社員だけでなく、将来、その会社で働くかもしれない次世代の人たちを育てている教育機関もステークホルダーなんじゃないかと。つまり、株主だけでなく社会全体が企業のステークホルダーと言えるのではないでしょうか。

その意味では非上場で個人が100%支配している会社や、自分の才覚だけで自分のお金を運用している人が経営している会社も社会で活動しているので、ソーシャル・インスティテュートだと言えなくもない。ただ、何と言っても、上場会社は出資者が不特定多数であるという点で、より社会性・公共性が高い、ゆえに社外取締役の果たす役割は重いのではないかと思っています。

八田 社外取締役は、必ずしもその会社の業界や業務に精通している必要はないという意見もありますよね。坂東さんはどう考えますか?

坂東 「ある程度は知っている」みたいな顔をしている必要はあるように思いますけどね(笑)

八田 私個人は、社外取締役に厳格な専門性は必要ないと思っています。広くステークホルダーとしての理解や目線で、会社の業務執行を行う者が道を誤らないように監視して意見を言っていく存在、それが社外取締役の役割じゃないかと。

坂東 そうですね。私もそう思います。国際経験だったり、起業経験だったり、「あったほうがいいもの」を他の人よりもたくさん持っている人のほうがいい、ということはあるかと思います。私自身、同じ会社で何年も社外取締役をやっていると、その会社に情が移って応援団みたいになってしまい、社会から見たらどうかという観点から外れてしまわないか、注意するようにしています。

八田 坂東先生は社外取締役を引き受けられる際、どういったことを条件にされていますか。

坂東 その会社のトップや人事の方とお話をしたときに、「話が通じる相手」だと思えるかどうか、でしょうかね。価値観がぴったり一致する必要はないのですが、私の意見をちゃんと聞いてくださるかどうかですね。

八田 業種は選ばないですか。

坂東 基本的には選んでいませんが、製造業は手触り感があるという点でもわかりやすいですね。

坂東眞理子氏(撮影=矢澤潤)
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