即座に第三者委員会を設置したNHK
(#9から続く)NHK報道局所属の記者による経理不正請求を受けて、前回は2つの「またか!」のうちのひとつ、つまり20年前にも問題になったはずの不祥事を生む組織体質を改善できなかった点について指摘した。
今回はもうひとつの「またか!」である。それは、「報道局職員の不正な経費請求に関する第三者委員会」を立ち上げたことである。
NHKは当該記者の不祥事を受けて、即座に「第三者委員会」を設置することを表明した。広報局はこう発表している。
〈取材・政策にかかわる領域ではありますが、検証を可能な限りアカウンタブルにするため、外部の有識者からなる第三者委員会を早急に設置して徹底的に調査を行います。/また、同様の事案が起きていないか、第三者委員会のもとで、徹底調査し、厳正に対処してまいります〉(2023年9月26日付)
報道局職員の不正な経費請求について
https://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/giji/shiryou/1432_kaicho01.pdf
また、10月の稲葉延雄会長の定例会見では、記者との間でこのようなやりとりがあった。2023年10月18日の会見録を引用する。
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記者 報道局職員の不正な経費請求の件について、調査対象はどうなったのか。
担当者 第三者委員会を設置して、その指導や助言を受けながら調査を進めていきますので、範囲や期間についても助言を受けながら進めていく予定です。
記者 まだ第三者委員会は設置されていないということか。
担当者 第三者委員会については現在詰めているところです。
記者 どのような場合が懲戒処分の対象になるのか。
稲葉会長 この辺のところは予備的な調査を今やっているわけですが、第三者委員会を立ち上げて、正式にきちんと調査をするという手順になっています。その結果、この事案の悪質性などを踏まえて第三者委員会の方々にも判断をしていただこうと思っています。それに見合って、どのような処分をするのかという議論をしていただきたいと思っています。
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近年はNHKに限らず、社内で不祥事が起きると、何かにつけて「第三者委員会」へ丸投げする企業・組織が後を絶たない。メディアの側も、会見等で「第三者委員会を立ち上げるのか?」と質すのが通例になりつつある。まるで、第三者委員会の立ち上げこそが、社内の不祥事に組織として真摯に向き合うための“唯一の正解”であるかのような風潮さえ生まれつつある。
しかし、今回のNHKの事例は、本当に第三者委員会を必要とするに値するものなのか。
第三者委員会設置でフリーズするメディア
現在明らかになっているのは、報道局の一職員の、30数万円の経理不正に過ぎない。ここで、あえて「過ぎない」という理由は後述するとして、あるいは、まだ表沙汰になっていない問題が背後に隠れているのかもしれない。しかし、そうであるならば早急に公にすべきであろう。それともNHKはこの金額程度の問題でさえ、社内で調査・実態解明・対策を講じることができないのだろうか。発覚から2カ月以上が経過した現時点においても、大いに違和感のある対応と言わざるを得ない。
NHKに限らず、不祥事を起こした企業が第三者委員会に調査を丸投げし、「報告を待ちたい」と述べるのは、時間稼ぎという側面もある。問題発覚直後はメディアも報道・追及するが、企業側から「第三者委員会に任せているので」と言われてしまえば、それ以上深追いしなくなるのが一般的だ。当然、調査には数カ月はかかるため、その頃には世間の興味・関心も失われている。報告書は後に提出され、その時は報じられるが、余程の中身でない限り、世間の耳目を引くこともない。
さらに第三者委員会は、時として不祥事を起こした企業にとっての自浄作用がないことを覆う隠れ蓑にさえなっている。内部で処理するのではなく、調査結果の内容以前に、委員会を立ち上げて第三者の目に晒すという体を取ったことのみで、どこか「禊」を済ませたかのようにも思われる。「社としては第三者委員会に最大限協力した」という姿勢を取ることで、「やることはやった」とのアリバイづくりにもなる。 これでは、企業は第三者委員会が醸し出す「利害関係を持たない第三者による、公平で厳しい調査を経た」というイメージを悪用していることになりかねない。監査・ガバナンスを専門としてきた私からすれば、忸怩たる思いさえするのである。第三者委員会は、内部で実態解明を行えない職務放棄の言い訳や、時間稼ぎの道具ではないのだ。