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JR西日本・福知山線脱線事故の20年、経産省「企業買収指針」策定の20年【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#18】

「過去を振り返らずに前進あるのみ」の経産省

経産省は、05年5月に買収防衛指針を策定・公表してから20年が経過した今年4月末、日本の上場企業の「稼ぐ力」を強化するため、「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」において進められてきた検討を踏まえ、「『稼ぐ力』を強化する取締役会5原則」、「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」を公表した。

これらにも「各企業において『稼ぐ力』を強化するためのコーポレートガバナンスの取組等の一例を示すものであり、記載されている取組を一律に要請するものではありません」との記載がある。まさに、ルーチンな言い回しである。

福知山線での脱線事故を契機に、ヒューマンエラーを根絶しようとする考えからパラダイムシフトし、ヒューマンエラーは必ず起きるが、そのエラーをどのようにマネジメントするかという管理手法に転換を図ったJR西日本。

一方、コーポレートガバナンスや買収法制に関して次々と指針やガイドラインを策定し、予測可能性や内容の是非等は、裁判所の判断に委ね、過去を振り返らず、常に前を向いて突き進む経産省――。どちらが持続可能性のあるモデルを提示するものなのか。

鉄道の運行が時間厳守ではなくなった現在、多少の不便を感じつつ鉄道を利用しながら、そんなことを考えた。

(隔週木曜日連載、#19は5月29日公開予定)