東北新幹線“連結器”インシデントに思う「上場企業のSPC連結外し」のRed flag【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#14】

監査法人は調査報告書の事実認定を認めず「経営者不正」を認定

さらに監査法人は、SPCの連結要否の検討に必要な情報がエネチェンジの取締役会等に適時かつ十分に報告・共有がされていなかったなど、内部統制上の問題があるのではないかと指摘した。

エネチェンジ側はこれを受け、外部調査委員会を立ち上げる。調査委は、SPCを非連結とした従来の会計処理について事実関係を明らかにし、会計処理の検討過程、同社の内部統制上の課題などを評価する調査を実施。

調査報告書は、エネチェンジの内部統制、経営者の誠実性や不適切な言動、監査法人とのコミュニケーションに問題があったことは指摘したものの、同社の役職員が監査法人に対して隠蔽したり虚偽の内容を伝えたりしようとした事実等は認定できないと結論付けた。

ところが監査法人は、調査委の調査報告書に納得せず、経営者がSPCの出資者への融資について取締役会への報告も監査法人への説明も行わなかったこと(前段①)、社債権者が実際は制約なくオプション契約が行使できる状態だったこと(同②)や、それを行使し持ち分をエネチェンジ側に引き取らせる可能性が高かったこと(同③)について、執行役員が監査法人に異なる説明を行ったとし、重要な虚偽表示の原因となる不正が存在したと認定した。

これらは不正リスク対応基準のRed flagである「関連当事者又は企業との関係が不明な相手先(個人を含む)との間に、事業上の合理性が不明瞭な重要な資金の貸付・借入契約、担保提供又は債務 保証・被保証の契約がある」、「重要な投資先や取引先、又は重要な資産の保管先に関する十分な情報が監査人に提供されない」などの項目に該当すると考えられる。

監査法人がエネチェンジの経営者の重要な虚偽表示(金融商品取引法でいう「重要な虚偽表示等」)を認定し、「経営者による内部統制の無効化リスク」と「SPCにかかる連結範囲の妥当性の検討」の2つをKAM(監査上の主要な検討事項)に記載したことは、資本市場に対して監査証明の職責を担い会計プロフェッションとしての役割を発揮したものといえる。

原因不明のまま再開された東北新幹線の「連結運転」

ところで、話は東北新幹線に戻る。いまだ連結器が外れた原因は特定できておらず、国の運輸安全委員会も原因を調査している最中の3月14日、JR東日本は当面の措置として、連結器が外れないよう固定する対応策を講じて連結運転を順次再開した。

東北地方の主要都市から東京への効率的なアクセスを担う新幹線の連結運転は利用者にとって好意的に受止められているようだが、抜本的な対策を講じるためにも、1日でも早い原因究明が望まれる。

翻って、上場企業によるSPCの連結外しについて言うと、エネチェンジ問題と監査法人による徹底した対応が、CEOは元よりCFO(最高財務責任者)などを含む経営陣に共有されるべきだろう。経営者が自らを律して不正を抑止し、それを制度的に担保するリスク管理体制の見直し、高度化を進めることを期待したい。

なぜなら、原因究明、そして他社(他者)事例を自らの経営活動に“連結”させることこそが過ちを防ぐ最も有効な方策なのだから……。

(隔週木曜日連載、#15は 4月3日公開予定)