一条ゆかりの日経「私の履歴書」と“企業価値の持続的な向上”【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#13】

「社内取締役」こそコアビジネスの担い手

確かに、CGコード再改訂版や対話GLなどを受け、企業の執行側も経営を担うコアメンバーがナレッジやスキルセットを習得し、社外取締役も能動的に活動するようになった結果、一部の上場企業の取締役会では議論の仕方が変わり、会議体が活性化するようになっていることも事実だ。

しかし、取締役会の監督機能が高められるようになったとしても、企業価値の向上に資するコアビジネスの構築・運用などは、依然として、社内取締役の手腕にかかっている。このことが毫も疑いのないことも、これまた事実であろう。

企業(経営者)は、ガバナンスを高度化した上で、自社のビジネスを、目まぐるしく変化するトレンドを見据え、成長に向けて「機会」と「リスク」を見極めながらビジネスを進めていく必要がある。また、多様な諸課題をめぐって、環境の変化に即応し、それが難しい場合はビジネスドメインを変更することなども意識して、ポートフォリオを変更するなどの大胆な選択肢も採れるように、持続的な取り組みが求められている。

そして、それらの課題の解決への対応がどのように自社の中長期的な企業価値の向上に結び付くのかを企業価値創造のグランドデザインとして描き、経営計画に具体化させて実現していくことが期待されている。

企業が上記のミッションを果すことができるのは、自社の企業価値を維持・向上させるために、持ち得るリソースを可能な限りそれにつぎ込める社内取締役をおいて他にはいない。

一方、社外取締役の役割は、社内取締役にそのように行動するよう仕向けること(そのような行動をとらない社内取締役には退出してもらうこともある)。そして、社内取締役による課題への取り組みに対して、取締役会等を通じて外部者としての専門性や知見をもとに全力で助言し、多面的に議論を尽くすなどして、企業価値向上に向けた経営者の不断の努力を信認する役割であることに留意する必要がある。

社外取締役を構成員とする取締役会がこのような役割を発揮するには、当然、社内外の取締役がどのようなスキルマトリックスや、多様性を備えるべきかについても、解は自然と見えてくるはずである。