フジテレビ港社長会見と社外取締役に求められる「型破りなアクション」【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#10】
南海トラフ地震に備える「型破りなアクション」からの視点
話は、1月19日のNHK総合テレビの「明日を守るナビ」という番組へと変わる。
この番組は、南海トラフ巨大地震の可能性が指摘される中、震災の経験を未来につなぎ、一人でも多くの命を守るためにテレビ局に何が出来るのかを、阪神淡路大震災30年を節目に、NHK大阪放送局と関西の民放6局が連携して企画・制作されたものである。
クロスロード(正解のない難しい問題)に7局所属の若手アナウンサーたちが、それぞれイエスかノーを選択し、そのような判断をした理由を話してもらった上で、クロスロードの発案者である京都大学防災研究所の矢守克也教授が解説を加えてアプローチを深めていくという興味深い内容だった。
中でも「これは!」と思ったのは、「緊急地震情報が出た、震源は紀伊半島沖М8.0。(アナウンサー自身が)南海トラフ地震かもしれないと思った場合、『南海トラフ地震かもしれません。今すぐ逃げてください』と呼びかけるか」という設問に対する矢守教授の解説だった。
回答としてイエスの選択者が2人、ノーが5人だったが、矢守教授の解説は、本当に危険と思ったならば、マニュアルにはなくても強く呼びかけてもよいのでないか、緊急時に人を動かすのは、よい意味での「型破りなアクション」で、いつもと違う、よい意味での型破りなアクションをこれからも考えていきたいというものだった。
フジテレビに戻る。
スポンサーがCM中止を申し入れる事態が続き、広告主も、1月17日の記者会見は世間の納得を得られるものでないと判断していることが窺われる現状となっている。そんな時こそ、執行部門から独立した社外取締役が、取締役会に能動的に働きかけ、場合によっては、よい意味での型破りなアクションにより、不正の疑いに対して徹底した調査を働きかけ、自浄作用を促す機会とすべきではなかろうか。
1月17日の社長の記者会見に危機感を抱いたフジテレビ、そしてフジHDの社外取締役が覚醒し、コーポレートガバナンス改善に向けて能動的な行動に踏み出すことを期待したい。
*
【追記】本稿校正中(1月21日)の夕方、フジHDの社外取締役が臨時取締役会の開催を求めるというニュースが入ってきた。同月17日の港社長の記者会見は不十分であり、23日に臨時取締役会を開催し、第三者委員会の設置を求める意向などというものだった。本稿では筆者も詳細には言及しないが、フジHDの社外取締役も時機に遅れてしまったとはいえ、動きだすようだ。
仮に第三者委が設置されるという結論となっても、独立性・中立性が確保された調査委員会によって、徹底した実態調査と真因(ルートコーズ)が明らかにされ、自浄作用を発揮できるか――。さらに注視したい。
なお、本稿は1月23日に配信予定だったが、事態の推移を見るに一刻も早く配信すべきと編集部と考え、1日前倒しにした。
(隔週木曜日連載、#11は2月6日公開予定)
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