十二月大歌舞伎「あらしのよるに」と株主価値の最大化原則【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#7】

現代歌舞伎の姿勢を見習いたい会社法学説

話を十二月大歌舞伎の『あらしのよるに』に戻そう。

原作は、1994年に出版されたきむらゆういち(木村裕一)の絵本で、続編を含めた累計発行部数が350万部を超えるベストセラーシリーズ。狼のがぶ役を務めた中村獅童は、2005年にアニメ映画化された際もがぶの声を演じ、歌舞伎の演目としては、15年9月に、京都南座での舞台を皮切りに各地で上演を重ねてきた。

さまざまな形で「あらしのよるに」に関わり、原作と歌舞伎を結びつける存在として作品をつくり上げてきた獅童だが、発刊30周年に当たる今年12月の舞台でがぶ役を演じるのは、5度目だという。

長唄や義太夫といった歌舞伎音楽、舞踊、衣裳デザインも、伝統をベースに現代風なアレンジが施され、煌びやかな舞台として仕上がっていて、ディズニーの「ライオンキング」にも劣らない見所満載のエンターテインメントに昇華している。

そして、主役だけでなく、すべての関係者が協働連携して歌舞伎を盛り立てて、時代にあわせてサステナブルなものとして存続しようと努力する姿勢が印象に残った。会社法学も、歌舞伎に倣い、法と経済学一辺倒に傾斜して閉塞状況にある現状を脱してレジリエント(回復力、弾性のある)で、サステナブルな学問として成長することを期待したい。

(隔週連載、#8は12月26日公開予定)